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残債はどうなるの?時効
競売にしても、任意売却にしても、いずれにしても残債は残ってしまいます。
これは、みなさまが思い悩み、気になるところだと思います。債権及び債権者の回収の仕方で3つの残債処理が考えられます(自己破産しない場合)。
残債処理1つは、時効になる。(時効の援用をして、借金を0(ゼロ)にする。)
残債処理2つは、保証会社からサービサーに債権譲渡された後、(債権額の何割かの現金を用意して)サービサーより債権を買い取り借金を0(ゼロ)にする。
残債処理3つは、債権者との話し合いで支払える範囲内で永きにわたりずーと支払う。
以上3通りになります。
①消滅時効
消滅時効とは、一定期間、権利が行使されなかったことによって、その権利が消滅します。
民法では”権利の上に眠るものを保護しない”とされています。債権があるからといって、何もしない場合はその権利は消滅致します。消滅する期間は下記になっています。
消滅時効にかかる期間
債権 | 時効 |
一般債権(民法167条) | 10年 |
判決で確定した債権(民法174条の2) | 10年 |
商事債権(商法522条) | 5年 |
地代、家賃、管理費(民法169条) | 5年 |
注意していただきたいのは、金融機関により時効になる期間が5年か10年になります。
株式会社である金融機関(普通銀行・ノンバンク等)は、「商人」に該当し商法が適用され債権消滅時効期間は、5年です。
特別法の規定により設立されている金融機関(住宅金融公庫=現・住宅金融支援機構、信金・信組・ろうきん・商工中金・農協等)は、非商人であり民法の規定が適用となり、債権消滅時効期間は、10年となります。
債権者も債権が消滅しないよう、法的な手だてを講じてくると思いますが、状況(債務者の)によってはそうとも断言できないのです。
債権回収のプロが時効になるのを知らずに債権を放っておくことがあるのだろうか。
そう疑問を持たれる方もあると思いますが、法務省の平成23年6月の発表データによればサービサーの累積取扱債権数は1億381万件で累積取扱債権額は320兆円となっていますので1件当たりの債権額は約300万円となっています。
債券回収担当者一人が担当する債権額は、相当の件数を担当しているものと推測できます。
当然、債権回収担当のノルマも当然にあるでしょう。無かったにしても成績、ボーナスなどに影響するでしょうから、担当者とすれば限られた時間で、効率良く回収するには優良債権(高額で、債権回収がしやすいもの)に、より力を入れることになり、手間がかかり、時間がかかるもの、回収できそうにないもの等は後回しにされ放っておかれる可能性があるのです。
なお、時効が成立しているかどうか、そして起算日(支払い期日)についても、法的判断が難しいですので、素人判断は避け、法律家に確認して頂きましょう。
時効の中断
時効は下記の手続きにより中断致します。(民法第147条)
①裁判上の請求(民法第147条)
②支払督促の申し立て(民法第150条)
③和解及び調停の申し立て(民法第151条)
④破産手続き参加(民法第152条)
⑤催告(内容証明郵便等の送付)(民法第153条)
⑥差し押さえ、仮差押え、仮処分(民法第154条)
⑦承認(民法第156条)
⑤の催告を行っただけでは時効は完全に中断しません。
催告後6カ月以内に裁判上の請求が必要です。 6か月ごとに催告をしても時効は中断しません。 ここが重要なポイントです。 一般的には6カ月以内に毎回催告書、請求書を発送しておけば時効が中断されると勘違いされています。 |
競売、任意売却後に無担保の残債が残ります。
たとえば2000万円借り入れのあるマンションを1500万円で任意売却したとした場合、500万円の残債となります。
後日、債権者は、一括で残債を支払うよう催告してきます。
債権者から6カ月ごとに催告書が郵送されてきていたとしても、その状態が5年過ぎた場合、時効が成立していると思われます。
そのような場合は、法律家に相談することをお勧めします。もし、時効が成立していれば、下記に示す時効の援用により残った残債については無かったものとなります。
尚、途中で、支払う旨の約定書を提出したり(⑦の承認)、少しでも支払いをすると、そこで時効が中断しますのでご注意ください。
時効相談事例1
Q 何もなければ5年で消滅するとのことですが借金は消えるのですか?
A 時効の効果は、それをすることによって利益を受ける人が援用(下記参照)をして、初めて効力を生じるとされていますのでその手続きをふまなければなりません。(民法145条)
時効相談事例2
Q 現在、サービサーより半年に一度の割合で督促状がきます、普通郵便です。半年に一度督促状をうけとれば時効が中断すると聞きましたが、そうでしょうか?
A 督促状が半年に一回づつ送達されたとしても時効は中断致しません。仮にこの状態であれば、民間の住宅ローン(信用金庫、信用組合は除く)は支払い期限より5年で消滅時効にかかります。時効が中断となるには、支払い督促送達後6カ月以内に裁判上の手続きが必要となります。
裁判上の手続きとは、このケースの場合は無担保債権となっていますので、支払い督促、民事調停、強制執行認諾公正証書、裁判を指します。
債権者が時効を中断するためには、督促状を送達したのち6か月以内に法的手続きを取った場合、その督促状の送達日が時効の中断日となります。
時効の中断事由として民法147条に1項に「請求」とあります。これは単なる請求ではなく「法的手続きの請求」ということになります。(裁判上の請求)
時効相談事例3
Q 銀行の保証会社からサービサーに売却されしばらく何の連絡もなかったのですが、最近連絡があり、残債の一部(金額は少なくてもよいとのこと)を支払いを求められました。翌日に云われた金額をふりこみました。この場合、時効は中断したことになるのでしょうか?
A 残債の一部でも支払いをしますと民法147条3項の「承認」にあたり、時効が中断してしまいます。
時効相談事例4
Q 裁判所から支払いの督促が来ていましたが、まったく無視してそのまま放置しています。間もなく支払いを延滞して5年が過ぎようとしています。時効になっているのでしょうか?
A 債権者から訴えの手続きがなされると時効は中断されます。そして、裁判所の判決が下されると時効はさらに伸びて、今度は判決の日より10年となります。(判決で確定した債権)
時効の援用(えんよう)
債権は、消滅時効期間を過ぎたからと言って無くなるものではありません。
時効により利益を受けようとする意思表示である民法145条に定める「時効の援用」が必要となります。
時効の援用をして、初めて債権が消滅します。
時効の援用は、債務者だけでなく、その債務者を保証した保証人・連帯保証人も、時効により直接利益を受ける者として、時効の援用ができます。
時効になっていても、時効の援用をしない限り、債権者の支払い催告は、止むことはありません。
それでは、時効の援用はどうすればよいのでしょうか。
それは、郵便局より内容証明郵便で相手債権者に郵送するだけです。
下記に簡単な例を書いておきます。
なお、法律家に書類を確認していただき時効が確認され、ついでに内容証明郵便で出してもらうのもよいでしょう。
時効の援用例
内容証明郵便 (同じものを3通作成、1行20字以内、1枚26行以内)
通知書
前略
貴社より送付された00年00月00日付の当方に対する金銭貸借請求に
対し、下記の通り通知いたします。
貴社より借り受けた金員は最終弁済日より既に5年以上経過しています。
貴社の当方に対する貸金返還請求権は商法所定の消滅時効により、すでに
消滅しています。
よって本件貸金については消滅時効の援用をいたします。
今後、当方への請求は一切なさらないようお願いします。
草々
平成00年00月00日
通知人
東京都 大田区 蒲田 xx
借金 太郎
被通知人
東京都 品川区 品川 xx
株式会社マンション債権回収
代表取締役 品川 債権 殿
②サービサーより債権を買い取る
サービサーの数が104社をピークに現在86社(平成28年9月時点)に減りました。サービサーの取り巻く環境も変化してきたのでしょう。サービサーへ
サービサーは、まとまった不良債権を二束三文で大量に買い取り(バルクセール)、利益を上げていました。
しかし現在、債権の買い取りは入札制で行われていますので一時よりも高値で買い取らざるを得ない状況と思われます。
また、債権によっては買い取り金額がばらばらで、一律いくら、ということになっていないようです。
サービサーに債権が譲渡された後に、サービサーから残債の支払いについて話し合いたい旨の通知が来ます。
そこからサービサーとの交渉が始まります。
サービサーとすれば、残債の一部でもいいから早く回収して早く処理したいというのが本音でしょう。
ここが借金解決の大きなポイント・チャンスになりますので、しっかりした決意を持って交渉に臨まなくてはいけません。
この日のために、支払いを止め、つめに火をともすような切り詰めた生活をし、コツコツ蓄えた資金が「ここで生きてくるのです」。
交渉は、「残債の一括処理」で解決できるよう、根気よく交渉します。相手の立場、意向もよく聞き、妥協点を探っていきます。交渉のうちに、その妥協点が見つかるはずです。
また、一括で全額払えなくても、一時金でいくらかまとまった金額を支払い、残りに関しては払える範囲で3年ぐらいのめどで、月々いくらの支払い、というような妥協点もあります。
たとえば、1000万円の残債で、一括返済150万円で交渉できたとします。100万円を一時金で支払い、残り50万円を3年間、月々約1万4,000円の支払いで完済する。そのような解決法もあります。
これは、「債権者との取引」という感覚で臨んで頂きたいのです。
③の方法 わずかな金額でのらりくらり支払う
公的金融機関(住宅金融支援機構、信用保証協会など)の場合、債権をサービサーに管理を委託することはあっても、債権譲渡は致しません。
つまり、国民の税金を原資に貸し付けている公的金融機関は、債権をサービサーに売却することはありません。そのためサービサーと債権の買い取りを交渉することはできません。そのため、残債の一括支払いができない場合は、「支払える範囲内」で支払うことを約束させられます。
残債の返済の交渉では、返済可能な金額を提示して、”月々いくらしか払えません”、”いやいやこれでは少ないのでもう少し何とかならないか”、などとの話し合いになるでしょう。
例えば、残債1000万円の場合、月々3000円の支払いとした場合、元本だけで277年払いになります。それに、延滞利息が加算され、莫大な金額となります。しかし、実際払えないとなればそうなります。
そして、払ったり、滞ったり、振り込まれれば、金融機関はその都度領収書を発行しなければなりません。金融機関にとってはこの債権管理事務作業は大変なはずです。
債権者は、ならば自然消滅してくれるのを待っているかもしれません。
メールによる相談は有料です。
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