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マンション売却とトラブル

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マンションの瑕疵担保責任の判例

裁判事例1 心理的瑕疵

 

暴力団組員が居住するマンションで、組員の迷惑行為がマンションの住み心地を欠く状態であるとして、買主の売主に対して瑕疵担保責任に基づき損害賠償請求が認められました。

概略

買主Aは、売主Cからマンション3階部分の1室を代金3500万円で買い受けた。

マンションの1階には暴力団組員Dとその家族が居住。

Dとその家族は日頃よりマンションの共有部分を私物化するなど、迷惑行為を行っている。

そこでAは本件マンションには隠れた瑕疵があるとして、物件の引き渡しから1年10カ月後売買契約を解除し、損害賠償を提訴した。

判決

民法第570の瑕疵とは、物理的な欠陥のみならず、心理的欠陥も含むものである。

本マンションは暴力団が居住し、通常人にとっては、明らかに住み心地を欠くもので、瑕疵であると認められる。

Dが暴力団であるかどうかは、マンションに一定期間居住してみないとわからないことで、Aは契約当時知りえなかったものと認められる。

本マンションはAの予想していたものではなかったものの、居住の目的を達せられない程度の瑕疵とは認められない。よって契約解除は認められない。

瑕疵を前提とした本マンションの評価は3150万円で、マンション売買代金の差額350万円の損害を賠償すべき、と判示された。

(東京地裁 平成9年7月7日)

結び

本件マンションは、通常人として平穏な生活を乱すべき環境が1次的ではない属性として備わっている場合は、瑕疵であるとされた判例で、「瑕疵」の概念は広いことを示しています。

裁判事例2 外壁剥落補修するも瑕疵と認定

新築マンションの外壁タイルが剥離・落下したことにより、補修後においても区分所有権の価値を低下させたとして、売主の瑕疵担保責任が認められました。売買金額の5%と損害、慰謝料、弁護士費用の請求が認められました。

 

概略

マンション買主X1~X6は、マンションの分譲業者Yから、新築の本件マンションの各区分所有権を購入し、引き渡しを受けて、しばらくして本件マンションの外壁タイルの剥離・剥落を発見しました。

マンション分譲したYは、本件マンションの管理組合の承認を得て外壁タイルの補修工事を行い、約1年4カ月の期間を要しマンションのタイル補修工事は完了しました。マンション管理組合とマンション分譲業者Yは総額1億円の解決金を支払うことで和解が成立していました。

ところが、この和解に反対していたマンション買主X1~X6らは、マンション外壁タイルの剥落、及び本件マンションの補修工事の騒音等により損害を被ったとの主張により、マンション内主の瑕疵担保責任(民法第570条)に基づき、マンション分譲業者Yに対し、区分所有権の交換価値の下落による財産的損害、慰謝料、弁護士費用の各支払いを求めました。

福岡地裁では、マンションの財産的損害については、本件マンションの補修工事後の交換価値の下落が存在していることを認めるに足りる証拠は無いとして、また慰謝料についても、民法416条2項の「特別の損害」にあたるということをマンション売買契約時に予見できたとはいえないとして、マンション買主X1~X6らの損害賠償請求を全て棄却しました。

一審判決を受け、マンション買主X1~X6らは、控訴しました。
マンション買主X1~X6らの主張・・・
1、マンション新築後間もなくマンションの外壁タイルが剥落することは問題であり、このマンションの外壁タイルの剥落は瑕疵である。
長期間に及ぶ補修工事と併せ、購入した区分所有権のマンションの交換価値下落は財産的損害として建物価格の3割相当額、精神的損害に対しての慰謝料一人当たり500万円及び弁護士費用の合計額を損害賠償として請求する。

2、マンションの財産的損害については、本件マンションの共用部分の瑕疵に起因して、補修後もなおも残る本件マンションの価値下落による損害賠償であり、慰謝料請求については、本件マンションの大規模な補修工事による、工事期間1年以上を要し、このことによる精神的苦痛としての賠償請求である。

 

マンション分譲業者Yの主張・・・
本件マンションに瑕疵があったとしても、それはマンション外壁タイルの施工不良であり、これについては、すでに補修を完了しているから、すでにマンション売主としての瑕疵担保責任は果たしている。

 

裁判所の判決・・・
1、財産的損害について
マンション外壁タイルの剥離・剥落、程度、マンション新築物件の売買であること、本件マンション補修工事期間、工法、外壁タイルの仕様、瑕疵の顕在化による不安感、一般的な心理的な不快感、これら経済的価値の低下など認める。

マンション各室の交換価値の低下分をもってマンション売主の瑕疵担保責任における財産的損害とする以上、マンション外壁タイル剥落が共用部分に生じたものであっても、その共有持ち分を共有するマンション買主X1~X6らの損害賠償請求が否定される理由は無い。本件マンションの各室の交換価値の低下分は、建夫の価格の各5%とする。

2、慰謝料について
マンション居住者は、本件マンションの補修工事は受容しなければならないが、本件補修工事の騒音、粉じん等の生活被害までをも強いられるものではなく、これらの生活被害についてはマンション売主の負担で回復されるべきものである。慰謝料の金額は各人20万円~30万円相当と認める。

3、弁護士費用について
相当因果関係がある範囲において、売主の瑕疵担保責任による損害に含まれる。各人につき8万円~23万円とする。
(平成18年3月9日福岡高裁)

 

裁判事例3 マンションの防火扉説明不備の引き渡しは隠れた瑕疵及び説明義務違反

新築マンションの販売で、販売代理業者が買主にマンション専有部内の防火扉の操作方法を説明しなかった。そのマンションにおいて火災が発生し死亡事故の責任が、マンション売主の宅建業者とマンション販売代理会社に瑕疵担保責任と説明義務違反があるとされた事案です。

 

概要
マンション買主Xはマンション売主宅建業者Yが分譲したマンションの802号室をマンション販売代理会社Zの契約手続きで購入しました。

マンション802号室には、マンション専有部分内に防火扉の設置がされていて、火災発生時にはこの防火扉が自動的に北側区画と南側区画を区切り、延焼を防止できるようになっていました。

マンション販売代理会社Zはマンション買主Xに対して、契約時に重要事項説明書、図面等を交付していましたが、重要事項説明書にはこの防火扉の記載はありませんでした。図面には防火扉が点線で表示されていたのみで、マンション売主Y、マンション販売会社Zはマンション買主Xに対して、防火扉の電源スイッチの位置、操作方法について説明していませんでした。そして、スイッチはふたがねじで固定された連動制御機の中に組み込まれており、電源スイッチが一見して明らかな状況には有りませんでした。

北側区画で火災が発生し、防火扉が作動せず、火災の延焼を防止することが出来ずにマンション買主Xは死亡しました。

マンション買主Xの相続人X1(配偶者)は、マンション売り主Yに瑕疵担保責任に基づく損害賠償、そしてマンション販売会社Zに対しては説明義務を怠ったとして不法行為による損害賠償を求め訴えました。

 

マンション買主X1の主張
マンション802号室は防火扉の電源をONにした状態で引き渡されるべきであり、電源が切れた状態で引き渡されており、そして電源スイッチの位置についても分からない状況であった。したがって、売買の目的物に瑕疵があった。

マンション販売代理会社Zは、マンション802号室の引き渡しの時点で防火扉の説明する義務があるにもかかわらず、その説明を怠った。又、スイッチを入れた状態での引き渡すべきところ、その義務を怠った。

 

マンション売主宅建業者の主張
防火扉の電源スイッチは入った状態で引き渡している。

 

マンション販売代理会社の主張
マンションの販売代理会社は、802号室の引き渡しに際しては、防火扉の作動状況について調査。確認する義務は無い。そして、電源スイッチを入れた状況でマンションを引き渡す義務は無い。 その操作方法までも説明の義務は無い。

 

判決
マンション売主宅建業者の責任・・・
1、(瑕疵担保責任)
マンションの防火扉の電源スイッチの切れた状態での引き渡しは、その位置や操作方法等を説明しない状況においては、売買の目的物に隠れた瑕疵があると認められる。

2、(説明義務)
マンション売主は、本件マンションの売買契約上の付随義務として、マンション防火扉の電源スイッチの位置、操作方法等を説明する義務がある。この説明義務い違反がある。

 

マンション販売代理会社の責任・・・
1、マンション販売代理会社Zはマンション販売会社Yの全額出資により設立された会社であり、その密接な関係にあるYから本件マンションの契約、引き渡しを含めた一切の事務を行い、マンション買主Xもマンション販売代理会社Zを信頼したうえで本件マンションの引き渡し得を受けているのであるから、販売代理業者といえどもマンション売主Yと同様の義務がある。

 

その他の事例・判例

紛争事例4 新築マンションの不具合をめぐるトラブル 

新築マンションを購入したマンション買主が、マンションサッシの取り換え又は損害賠償を求め、

解決金としてマンション売主が20万円の支払い和解した。

 

裁判事例5 中古マンション老朽化についての説明義務 

マンションを媒介した不動産業者は給排水管の老朽化の進行程度の説明義務までは要求され

ていない。

 

裁判事例6 指針値を超えるホルムアルデヒドと瑕疵担保責任

基準値を超えるホルムアルデヒドは瑕疵担保責任が問われる

 

裁判事例7 イエヒメアリと瑕疵担保責任

イエヒメアリと瑕疵担保責任、一審では瑕疵担保が認められ、二審では否認された。

 

裁判事例8 中古マンションの雨漏りの調査義務 

中古マンション買主が購入後に発見した雨漏りが、マンション売主不動産業者の物件調査に過失

があったとして債務不履行があるとして損害賠償請求が認められた。

 

裁判事例9 マンションの生活音と瑕疵担保責任

マンション買主が、上階マンション居住者の生活上の音に耐えられず、マンションの売主に対して、

マンション売買契約の解除と、売買代金の返還を求めたが棄却された。

 

裁判事例10 浸水被害による新築マンションの契約解除

マンション買主は、購入したマンションの浸水被害は瑕疵であるとし、マンション売主不動産業者に

対する契約解除及び慰謝料、その他費用請求等が認められた。

 

裁判事例11 築19年の中古住宅に関する売主等の告知義務 

屋根・壁の老朽化、床鳴り等について、建築後19年経過した中古マンションが通常有すべき品質・

性能を欠くとは認められるものではないとし、マンション売主及びマンション媒介業者にも調査・告

知義務はない。

 

裁判事例12 建物の瑕疵と設計者・施工者の不法行為責任

マンションの設計者、施工者、工事管理者それぞれには、安全性に配慮すべき注意義務があり、

これを怠ったために生じた瑕疵によりマンション居住者等の生命、身体または財産を侵害した場合

には損害賠償責任を負う

 

裁判事例13 欠陥マンションの売買契約と媒介業者、銀行等の責任

雨漏りのある欠陥マンションを、その事実を隠してマンション買主に購入を勧め、契約を締結させ

た、関係者(媒介業者、銀行、税理士)に損害賠償を命じた

 

裁判事例14 建物の瑕疵について、建設会社及び設計監理者の責任

 

重要事項説明義務違反

裁判事例1 マンションの大規模修繕工事計画の調査確認漏れ

 

概略
マンション売買契約後、入居したマンション買主が、マンション給排水管の修繕工事計画が計画されたいたことが分かり、特別負担金を支払うことになったため、媒介業者が和解保証金を支払うことになりました。

 

 

内容
マンション買主Xは、マンション媒介業者Yの媒介で、中古マンションを売主Zより購入しました。マンション売買契約時、媒介業者からマンション内設備、給排水設備の状況のマンション重要事項説明書で、現状のまま普通に継続使用できるものと説明を受けました。

入居2ヶ月後にマンション管理組合より、総会決議に基づいての外壁、給排水配管工事を実施する旨の通知を受け、その特別負担金としてマンション区分所有者一人当たり130万円を徴収されることの内容でした。

この特別負担金についての説明はマンション媒介業者Yからの説明は有りませんでした。マンション買主Xがマンション管理組合に確認したところ、この特別負担金の総会決議は、Xがマンションの売買契約の前にされていました。

マンション買主Xは媒介業者Yの調査説明が不十分として、特別負担金に相当する金額130万円の損害賠償の支払いを求めました。

 

結果
マンション媒介業者Yは、はじめ、マンション売主からの説明がなかったこと、そして、マンション修繕工事計画の 情報を出来る限り把握するよう努めた旨の主張をしていましたが、マンション買主Xとの話し合いの結果、マンションの調査・説明が不十分であったことを認め、マンション修繕工事特別負担金130万円の8割を支払うことで合意しました。

 

裁判事例2 マンション隣地の建築計画の告知義務違反

 分譲マンションの隣地(南側)に新たに建築計画があったものを事前に認知しているにもかかわらず、それを秘匿して告げずにマンションを販売したことは、重要事項告知義務違反であり、損害賠償請求の対象となる。

 

概略
マンション買主Xら18名はマンション分譲業者Yの販売するマンションを売買契約締結しました。

その後、本件マンションの南側敷地に建物の建築計画(所有者は建築会社Z)があることが分かりました。

マンション買主Xらは、本件マンションの南側隣地に建物の建築計画があることを知っていながらそれを告げずに契約した本件マンションの売主Yに対して、日照阻害等の損害を与えたとして、債務不履行ないし不法行為による損害賠償請求権に基づき、慰謝料請求を求め提訴しました。

 

マンション買主Xらの主張
マンションを販売する宅建業者は、マンション購入者の意思決定に重要な意義を持つ事項(要素)については、購入者に告知する義務がある(信義則)。この信義則に反して購入者に損害を与えた場合には、債務不履行ないし不法行為として、その損害を賠償する責めを負うべきものである。

隣地所有者である建設会社Zは、マンション売主に対して、平成6年6月21日、書面にて、南側隣地(当時は雑木林)に社宅マンションを建設する予定であることを告げ、日照権等の苦情申立、損害賠償の請求を行わない旨、本件マンションの重要事項説明書に記載して、その旨を申し入れたいた事実がある。

本件マンションの売主は、そのことを何ら対処することなく、秘匿したまま、マンション買主Xらに本件マンションを販売した。

マンション買主Xらは、南側隣地が半永久的に緑地であり続けることを見込んで、本件マンションを購入したが、本件マンション売主は、南側隣地の建築計画を秘匿し、これを告知しなかったことにより、多大の精神的苦痛を被った。その慰謝料は少なくとも購入価格の1割を下らない額である。

 

マンション売主Yの主張
建設会社Zは、本件マンション販売当時、南側隣地に建設する具体的な計画はなかった。したがって、マンション売主Yは、マンション買主Xらにたいしいて、具体的に建築計画があることを告げることが不可能であった。よって、マンション売主Yはマンション買主Xらに対しての告知義務は無い。

 

判決
マンション売主Yには重要事項告知義務違反があるとして、マンション買主Xらの存がお賠償請求を認めました。

新しくマンションを分譲する売主は、宅地建物取引業法第35条第47条第1号の趣旨や信義則に照らし、マンションを購入する買主に対して購入の意思決定に重要な意義を持つ時効に関して、事実を知っていながら、故意にこれを告げない行為をしてはならないとの義務を負っている。これに違反し買主に損害を与えた時は、重要事項告知義務の不履行として、これを賠償する責任があると解するのが相当である。

マンション売買契約に付随する債務の不履行として、マンション売主Yは、マンション買主Xらに対してXらが被った損害を賠償する責任がある。(マンション売買代金の2%相当額)

(東京地裁 平成11年2月25日)

 

裁判事例3 中古マンションでルーフバルコニーに木造増築部分のあることの不告知

中古マンションの売買で、ルーフバルコニーに増築された木造建築が違法であることを告げなかった媒介業者に損害賠償が命じられました。

 

概要
マンション買主Xはマンション売主Yから中古マンションを購入しました。マンション売買契約では、媒介業者が買主にはA、売主にはBがそれぞれ仲介人となりました。

このマンションは、鉄骨造2DK40.04㎡であり、マンション売主Yがルーフバルコニーに木造の部屋を増築していました(3DK53.47㎡)。

マンション売り主側媒介業者Bは、売却の依頼を受けた際に、本件マンションの木造増築部分が問題を確認すべく、市役所建築指導課に増築の建築確認の有無を問い合わせました。が、不明とのことで、それ以上の追求はしませんでした。

マンション買主は、本件マンションに増築部分のあることは知っていたものの、違法建築とは思っていませんでした。マンション買主は転売目的でこのマンションを購入後、転売しようとしたが、マンション増築部分が違法建築であることを知って、転売を中止しました。

マンション買主Xは、マンション購入後3年経過して、行政庁に対して苦情の相談をし、その後に提訴しました。

 

マンション買主Xの主張
マンション売主Y、及び媒介業者Bは本件マンションの建築基準法上の違法性のあることを隠して、その事実を知らないマンション買主Xに売却した。

本件マンションの事情を知っていれば本件マンションを購入することはないのであるから、本件マンションの売買契約はマンション買主Xの意思表示に要素の錯誤があり無効である。

また、マンション売主Y、マンション媒介業者A、マンション媒介業者Bの詐欺によるものであるからマンション売買契約を取り消す。

さらに、マンション売主Y、マンション媒介業者A、マンション媒介業者Bによる共同不法行為であるから、本件マンションの売買契約の無効取り消しによるマンション売買代金の返還ないし同額の損害賠償と書費用等の損害賠償を請求する。

 

マンション買主側媒介業者Aの主張
本件マンションの増築部分は、外観上木造であることは明らかであり、重要事項説明においても木造で違法建築であることを説明したので、マンション買主はこのことを十分知ってマンションの売買契約を締結した。

マンション買主Xが、仮にマンション増築部分を違法建築でないと誤解して契約を締結をしていたとしても、本件マンションの価格は増築部分の価格を除いた金額が設定されており、本件マンションの売買契約の目的が達成できないほどの大きな錯誤があったとはいえない。また、マンション買主Xは、本件マンションが違法であることは容易に認識できるので、マンション買主Xは重大な過失がある。

マンション買主Xに対して、本件マンションが違法建築であることを秘し、また誤信させたことも無い。

建物が建築基準法に違反するものであるか否かの点については、業法に規定された重要事項説明の対象外であり、告知義務違反も無い。

 

マンション売主Y、マンション売り主側業者Bの主張
マンション買主側業者と同趣旨である。

錯誤が認められるとしても本件マンションの増築部分は分離可能であり、本件マンションの増築部分は価格に含まれてはおらず、マンション売主Yには利得は無く、マンション買主にも損失は無い。

 

判決
本件マンションの売買契約は、錯誤ないし詐欺による取り消しを前提とする不法行為請求は理由がないから棄却する。

マンション買主媒介業者Aに違法建築であることの告知義務について不法行為があるとして損害賠償金50万円を認容し、その余は棄却した。

本件マンションの増築部分であることは判然としており、マンション買主Xは木造の増築を認識したうえでマンション売買契約を締結したが、マンション媒介業者Aから増築部分が違法建築であることの明快な説明がなく、増築部分の違法性については認識していなかったと認定し、本件マンションは格安で、増築部分は違法であっても耐久性や、使用上の問題は無く取り壊さなけれなならないほどの危険性は無い。本件マンション増築部分の存在が、本件マンションの売買を無効にしなければならないほどの理由は無いし、マンション買主の認識に齟齬があったとしても本件マンションの売買を錯誤無効とすることは出来ない。

マンション媒介業者Aの説明義務については、業法第35条所定の重要事項説明の対象となる事項は、制限列挙されたものに限らず、取引において重要であると認められるものについても義務付けられている。と解するのが当然である。マンション買主側媒介業者Aについての告知義務違反による不法行為責任を認め、50万円の慰謝料の支払いを命じた。

マンション売主、及び売主媒介業者に対しては、瑕疵担保責任は別にして、本件マンションの違法建築であることを秘していたことは認められないとした。

 

裁判事例4 マンションのごみ置き場の説明がなされていなかった

新築マンションの買主が、購入マンション居室専用庭前面にゴミ置き場が設置されることを知り、マンション売主にその撤去を求め、和解にて解決した。

概要
マンション買主Xは、マンション売主業者Yから新築マンション売買契約を締結しました。

マンション買主Xは、内覧会で初めて、自室の専用庭前にゴミ置き場があることを知り、マンション売主業者にその撤去を請求しました。

当該マンションのごみ置き場は、町内会の反対により移設が困難となりました。

マンション買主Xは、マンション売主に対して、契約の解除若しくはゴミ置き場の移設、それが出来ない時は謝罪と目隠しのための植栽、さらに購入価格の減額を求めました。

 

マンション買主Xの主張
マンション売主からの、自室前にゴミ置き場に関する件の購入前の説明は一切なかった。 そして、ゴミ置き場の件が事前に分かっていればマンションの購入はしなかった。

契約を解除するか、ゴミ置き場の移設をするか、それが出来ないときは、謝罪と、目隠しの植栽、さらに慰謝料としての270万円の支払いを求める。

 

マンション売主Yの主張
マンションゴミ置き場の件は事前に説明はしなかった。マンション ゴミ置き場の移設については、役所に相談し、近隣住民の同意がないとできないとのことで、不可能になった。

契約解除や代金の減額には応じられないが、迷惑をかけたのは事実なので植栽と慰謝料として30万円は検討したい。

 

和解
マンション売主業者が、マンション買主に対して目隠しとしての植栽と文書による謝罪 、解決金として60万円を支払うことで和解した。

 

裁判事例5 オーシャンビューの説明に反した

全戸オーシャンビューとの触れ込みで、眺望を遮る物は無いと説明を受けマンションを購入した買主が、ベランダ付近に電柱や電線があることで、マンションの売買契約を請求し、認められました。

概要

マンション買主Xはマンション販売会社Yから、Yが分譲するマンションの一室を代金2640万円で購入した。手付金100万円、違約金528万円、オプション工事96万円の契約内容であった。

販売パンフレットでは、全戸オーシャンビューと記載され、海側には電柱その他何らの障害物の記載がなく作成され販売されていた。

マンション完成後購入した301号室のベランダ側に電柱、送電線が設置されていた。

マンション買主は、マンション売主に対して、本件マンション売買契約時において電柱、送電線の説明がなされていないことを理由として、マンション売買契約解除の意思表示(内容証明にて)をした。

マンション売主は、マンション買主に対して、残代金を支払うよう催告し、その期日に支払いがなければマンション売買契約を解除する旨の内容証明で通知し、マンション買主がマンション残代金を支払わなかったので、債務不履行による損害賠償請求をした。

一方、マンション買主は、マンション売主に対して、消費者契約法によるマンション売買契約の取り消し、マンション売主の債務不履行によるマンション売買契約の解除を理由として手付金、オプション工事代金の返還を求めて反訴した。

 

マンション買主主張
マンション販売パンフレットでは、全戸オーシャンビューのリビングが自慢と記載され、マンションパース(鳥瞰図)ではマンション海側には何の障害物がないものであった。

マンション301号と501号のどちらか購入の検討していたが、マンション販売担当者にベランダからの眺望につきどちらの部屋にも眺望の違いは無いとの返答であったので301号室を購入した。

 

マンション売主主張
マンションベランダ側に 視界を遮るものは一切ないとは説明していない。

マンション301号室はその後、同一条件で購入者があったわけであるから、電柱による眺望阻害に関して消費者契約法第4条第2項の重要事項に係るものではない。また、不利益事実の不告知に該当しない。

 

判決
未完成のマンション売買では、マンション売主は、マンション購入希望者にマンションに係る重要な事項について可能な限り情報を提供し、説明する義務がある。マンション居室からの眺望を謳い販売していることは、マンション眺望は重要な事項と言うことが出来る。

重要事項の説明がなされていれば、マンション購入希望者がマンション購入をしなかったであろうと認められるときは、マンション買主は、マンション売主の説明義務違反、債務不履行によりマンション売買契約を解除することが出来る。

消費者契約法第4条第1項1号は、「事実と異なること」とは客観的な事実と異なることと解すべきで、また同条第2項は 、事業者の故意が要件であり、マンション売主担当者は電柱の存在を知らなかったことは故意にあたらず、したがって消費者契約法によるマンション売買契約の取り消しは認められない。

以上のように、裁判所は重要事項の説明義務違反は認め、マンション買主の主張を認めました、

(平成18年2月2日 福岡地裁)

 

 

裁判事例6 マンション修繕積立金滞納額調査の懈怠

 マンションを媒介した不動産業者が、マンション買主に、マンション全体の修繕積立金滞納額を説明しなかったとして媒介手数料を返還した。

 

 

概要
マンション買主は、マンションを不動産業者の媒介により中古マンションの売買契約を締結した。

マンション売買契約締結の際、マンション買主は、不動産業者より、マンション売主の管理費及び修繕積立金の滞納はないとの説明を受けた。

マンション購入後、当該マンションには、全体の多額の滞納修繕積立金があることが分かった。

多額の滞納金は計画するマンション修繕を中断するか、又は、他の区分所有者がその分を負担建て替えて行う必要がある。

マンション買主は、マンションを媒介した不動産業者に対して、マンションの管理費等の調査を怠ったことにより損害が生じたとして、その損害賠償を請求した。

 

マンション買主の主張
マンション売主の管理費、修繕積立金等の延滞はないとの説明は受けていたが、マンション全体の管理費等(修繕積立金含む)の滞納があることは、説明を受けていなかった。これは資産価値が少ないマンションを買わされたことになる。その財産価値低下分の損害を賠償請求する。

 

マンション媒介した不動産業者の主張
マンション売主の管理費等の説明はマンション管理組合に調査の上、マンション買主に説明を行った。したがって、当社には重要事項説明義務を満たしており、損害賠償責任を負うことは無い。

 

結果(和解)
宅地建物取引業法第35条第1項第6号及び施行規則第16条の2第6号において、「当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容及び既に積み立てられている額」を説明する義務があると規定されている。

マンションを媒介いた不動産業者は、媒介において瑕疵のあることを認め、マンション媒介手数料を返還することでマンション買主と和解した。

マンション売買契約のトラブル

裁判事例1 マンション売買契約(要素の錯誤)

マンションを購入したところ、購入したマンションの部屋の直下にポンプ室があり、その騒音を理由が、マンション売買契約の要素の錯誤の当たりマンション売買契約が無効とされました。

 

概要
マンション買主Xは、マンション分譲業者Yより、新築マンション2階の一室を購入しました。

マンション買主Xは、当該マンションを引き渡しされ、入居した直後から、階下の騒音がすることから、マンション売主Yに、その対策を講ずるよう求めました。

マンション売主Yは、マンションの施工業者、マンションの設計者と騒音の原因を調べたところ、マンション給水ポンプに有ることが判明し、その防音工事を行いました。

マンション買主は、その防音工事が不十分として調停申し立てをし、それを受けて、マンション売主はさらなる防音工事を行いましたが、結局解決には至らず、調停は不調に終わりました。

マンション買主は、本件マンション売買契約は要素に錯誤があり、無効であるとの訴えを起こしました。

 

マンション買主Xの主張
マンション居室直下のポンプ室の騒音は、物件の瑕疵であり、瑕疵担保責任に基づく契約の解除が出来る。また、詐欺として取り消すが、マンション居室直下にポンプ室があることは認識しておらず、そういう事情があれば購入していなかったものであり、要素の錯誤であり無効である。

買主は、真下の受水槽につき、それが音を発するものかどうか、発するとすればどの程度の音なのかを尋ねて、音のしない住居であることを希望し、その意思を表示しているので、要素の錯誤のあたる。

 

マンション売主Yの主張
本件マンションは隠れた瑕疵に該当せず、詐欺を働いたことも無い。また、マンション買主Xは音のしないことを希望するとの意思表示はしておらず、その動機は表示されていないので、要素の錯誤にはあたらない。

 

判決
本件は、マンション売買後にマンション売り主・マンション建設会社が防音工事をするもその効果を上げることが出来なかったことのより裁判になったものです。

裁判所は瑕疵担保責任による解除、要素の錯誤による無効、詐欺による取り消し、のうちの「要素の錯誤による無効」を認め、マンション買主の請求により、マンション売主の売買代金の返還を命じました。

マンションのポンプ交換については、管理組合の決議が必要となるため、マンション買主Xの一存では出来ないこと、また、マンション売買契約時に受け取った図面には購入した居室真下に「受水槽」の記載があり「音はしないのか?」と尋ねたのに対して、マンション売主担当者が「昔はしたけど今はしません」と答えたことは、マンション買主Xは、静けさを求めていたとの意思表示と捉えるべきで、マンション買主Xの意思表示には、要素の錯誤があると判断され、マンション買主Xの代金返還請求が認められました。

(平成12年12月15日 大阪高裁)

 

 

裁判事例2 合理的な理由がなく相場より高額なマンション売買契約を締結した(転売)

不動産業者に、節税を目的としてマンション、不動産の購入を依頼された顧客に対して、十分な情報も提供せず、合理的な理由も無く相場より高額な物件の売買契約の締結は債務不履行にあたり、損害賠償を認めた。

 

概要
マンション買主Xは、賃貸マンションの購入(投資目的)を、不動産業者に物件の紹介を依頼した。

不動産業者は、マンションを不動産業者が売主として、本件マンションを5800万円で売却する契約を締結した。本件マンションは、不動産業者が他の売主から4500万円で購入したものであり、転売された内容となっていた。マンション買主X に対してはこの不動産業者の取得価格に関する説明はなされてはいなかった。

その後、マンション買主Xは、本件マンションの時価相場は4000万円程度であることが分かり、マンション売主である不動産業者に対して、債務不履行ないし不法行為を理由に1500万円の損害賠償を求め提訴した。

なお、マンション買主Xはマンション購入8ヶ月後4300万円で転売している。

 

マンション買主の主張
マンション買主は、不動産業者にマンションの媒介を依頼したものであり、不動産業者は、本件マンションの時価の説明責任がある。

不動産業者は、マンション買主Xとのマンション売買契約を成し通常の媒介手数料を超える利益を取得し、利益をあげた。このことは媒介の趣旨に反し、マンションを不当な高額で売りつけ、1800万円相当額の損害を与えたものである。

 

マンション売主不動産業者の主張
本契約は、不動産業者が売主で、マンション買主とのマンション売買契約であり、媒介契約に基づくものではない。

本件マンションの売価は、時価より高額なものではなく、又虚偽の説明はしていない。

 

判決
マンション売主の不動産業者の債務不履行を認めた。そして、マンション買主Xが8ヶ月後転売した代金との差額1500万円の損害賠償を命じた。

マンション買主Xとマンション売主不動産業者との関係は、単なる売買の関係ではなく、不動産業者は節税目的のためのマンション購入を委託されたものと解するのが相当である。したがって、不動産業者Yはマンション買主が当該マンションを購入するかどうか的確な判断が出来るよう情報を提供すべき義務がある。

不動産業者Yは、マンション買主に情報を与えず、合理的な理由も無く、高額なマンションを売却する契約を締結したことは、不動産業者の本旨に従った履行とは到底評価できない。よって債務不履行に基づく損害賠償責任がある。

(平成6年9月21日 東京地裁)

 

 

裁判事例3 買主のローン条項を付さなかった(ローン特約)

買主Xがローンを利用する資金計画であることを知っていた不動産業者が、買主のローン特約(万が一ローンが利用できない場合には契約を白紙解約する条項)を付さずに、マンション売買契約書にローン条項を記載しなかった。その不動産業者に対して損害賠償責任を認めた。

 

概要
買主Xは自宅マンションを売却する予定で、不動産業者Yの媒介で土地の売主からその土地を購入した。

買主Xは自宅マンションを売却し、その売却代金900万円を購入資金とし、手付金は1000万円、銀行からの借り入れを4500万円の資金計画を立て、不動産業者Yにその旨告げていた。

買主Xは、土地の売主Aと本件土地の売買契約を締結し、手付金として400万円を支払ったが、売買契約書にはローン特約条項は付さなかった。

一方、買主Xが自宅マンションを不動産業者Yの媒介で第3者にマンションを売却する契約を締結したが、その契約書には「本件土地の購入のためのローンが利用できない場合は白紙解約」とするローン条項が付されていた。

買主Xは土地購入のためのローンを銀行に申し込んだが、融資を受けることは出来ず買主Xの債務不履行となり、違約として支払い済みの土地売主へ手付金が違約金として没収された。

買主Xは、不動産業者Yにたいして、本件売買契約にローン条項を付さなかったことにつき、不動産業者の注意義務違反であるとして、不動産業者Yに対し没収された手付金相当額400万円の損害賠償を請求した。

 

土地買主の主張
買主は、不動産業者に土地の購入に際しての資金計画を告げており、不動産業者との間には本件土地を購入の売買契約書にはローンを付すことは明示又は黙示の合意があった。

この合意があったにもかかわらず、ローン特約を付さなかった不動産業者には媒介契約上債務不履行責任がある。

 

不動産業者の主張
買主がいう、明示又は黙示の合意はなされなかった。そして、買主は本件土地売買契約の締結時、重要事項説明及び、土地売買契約書の読み合わせを行っており、其れにもかかわらず、ローン特約を知らなかったのは重大な過失である。

 

判決
買主と不動産業者との間には本件土地を購入に関してのローンを利用すること、ローン特約を付すとの黙示の合意があったというべきだある。それにもかかわらずローン特約を付さなかったのは債務不履行があり、損害を賠償する責任があるとして400万円の支払いを不動産業者に命じた。

買主は、不動産業者に自宅マンションの売却をも媒介依頼しており、本件の土地の購入資金計画も詳細に告げている。

買主は、ローンが利用できなければ、本件土地売買契約が白紙になるとの認識を有し、不動産業者としても、買主の説明から十分に認識していた。

買主が自宅マンションを第3者に売却するマンション売買契約書には、本件土地のローンが下りなかった場合には白紙解約することが明記されていることからすれば、不動産業者はローンが下りなかった場合の買主の意図を認識していたと考えられる。

土地買主は、自宅マンションの購入以外には、不動産取引の経験がなく、ローン特約という用語や、この特約を記載されていない契約書の法的効果については知識を有していないと認められる。

したがって、買主が、重要事項の説明や、土地売買契約書の読み合わせを行ったとしても、買主には過失は無い。

買主に過失があるとすることは、不動産業者が媒介報酬を得て媒介業者として介在した意義を失わせ、その責任を理由なく減殺するもので相当ではない。

(平成12年5月19日 大阪高裁)

 

裁判事例4 マンション契約ローン特約条項解除期限の徒過

不動産業者がローン特約解除期限を見過ごしてしまったことにより、損害賠償として手付金相当額を支払うこととされた。

 

概要
マンション買主Xは、不動産業者Yの媒介により平成6年5月1日にマンションの売買契約を締結した。

マンション買主Xの資金計画は、自己資金1000万円、社内融資500万円、住宅ローン1500万円の予定であった。

マンション売買契約書には住宅ローン特約(マンション買主は00銀行より融資を受けられない時は、マンション買主は無条件で平成6年6月末日までに、本売買契約を解除することが出来る。)が付されていた。

マンション買主Xは、住宅ローンの借り入れ手続きを行うも結局銀行の承認を得ることは出来なかった

マンション買主Xは、平成6年6月末日の午後5時頃から再三、不動産業者Yに電話をしたが、連絡が付いたのは午後7時頃であった。

マンション買主は、ローンの申請に努力したが承認が得られなかった旨を話、マンション売買契約の解除を告げ、マンション売主にも契約解除の連絡を要請した。

マンション媒介業者は了解し、マンション売主に伝えることを約束した。

マンション媒介業者は、今日は夜も遅く、あすマンション売主に連絡すればよいと考え、連絡を取らなかった。

翌日、マンション媒介業者がマンション売主に連絡したが、マンション売主は解除期限が過ぎたことを理由に、マンション売買契約の解除には応じなかった。

 

マンション買主の主張
マンション媒介業者にマンション売り主への契約解除の連絡を依頼し、マンション媒介業者がそれを了承したのであり、マンション媒介業者の責任で問題紛争を処理すべきである。

 

マンション売主の主張
解除権留保型のローン特約条項の場合、期限までに買主が解除権を行使しない場合は、ローン条項によるマンション売買契約の白紙解除は出来ない。

マンション媒介業者Yは、期限の平成6年6月末日までにマンション売主への契約解除の通知をしなかったから、ローン特約条項による白紙解約はできない。

手付金500万円全額を放棄することで、マンション売買契約解除を認める。

 

結末
解除権留保型の場合は、1日でも期限が過ぎればローン条項による契約解除は認められない。

マンション買主は手付金の放棄により契約は解除され、マンションを媒介した不動産業者は、債務不履行を認めマンション売主が没収された500万円を全額負担することとなった。

 

 

裁判事例5 マンションパンフレットに全戸南向きと不正確な表示をした。

 マンション販売業者が全戸南向きとの表示でマンションを販売したが、実際との齟齬があり、マンション売主に正確な表示・説明を行わなかったことにつき信義則上の付随義務違反があるとして、マンション買主の損害賠償請求が認められた。

 

概要
平成6年、マンション買主らはマンションの売主とでマンション売買契約を締結した。マンション売主が作成したパンフレットには「全戸南向き」表示され、敷地の配置図には方位が示されており、真南から約40度西方向を向いている表示されていた。

平成7年4月、本件マンションの、内覧会が開催され、引き渡し入居した。

その後、本件マンションは、真南より62度11分西方向に位置していたことが判明、平成8年12月に、マンション管理組合から、マンション売主に対して、マンション方位の問題に関する文書が送付された。

マンション買主らは、マンション売主に対して、方位の表示は信義則上の説明義務違反であり、その販売方法は債務不履行を構成するとして損害賠償を請求した。

 

マンション買主らの主張
マンション売主は、マンションパンフレット等で、マンション全戸のバルコニーが南向きであるとし、チラシ配置図には北を示すマークが南から約40度西に向いていることを表示していた。これにより、マンション買主らは、そのことを信じて本件マンションを購入した。

一般的には、南向きと表示して販売できる範囲は、最大で真南から45度の範囲とされる。それを超えたマンションを南向きと表示することは、マンション購入者に損害を与えることにあたる。これは信義則上の説明義務に違反するものであり、マンション販売会社の販売方法は債務不履行を構成するというべきである。

マンション買主らの被った損害は

①価格減少分損害金  @ 3万円/㎡

②日照減少分損害金  @150万円/室

③弁護士費用       請求金額の1割相当分

④光熱費増加分損害金 @100万円/室

⑤慰謝料          @300万円/室

 

マンション売主の主張
マンションの向きの概念は必ずしも確定されたものではなく、不動産広告においては南西向き、南東向きも含めて南向きの表現が許されるというべきである。

本件マンションは、62度西を向いているとしても、その程度の違いによって、マンション買主らが主張する損害が発生することは考えられない。また、マンションの向きとマンション買主らが主張する損害との因果関係は無い。

 

判決
裁判所は、マンション買主らの損害賠償請求を認めた。

マンションの購入にあたっては、マンション買主は、マンション販売業者の提供する情報に判断をゆだね、信頼して購入せざるを得ない立場にある。

マンション販売の不動産業者は、マンション買主の意思決定に重要な事実については、正確な表示・説明を行わなければならない信義則の付随義務があるというべきである。

マンションの向きによって日照時間が異なるため、マンションを購入する判断する重要な事項の一つと言える。マンションの向きについては出来る限り正確な情報を伝え、説明の信義則上の義務があると断ぜざるを得ない。

マンション売主はこの信義則上の義務に違反し、その責任を果たしていないので、マンション買主らに対して損害賠償責任を負う。

①慰謝料 120万円/各室

②弁護士費用 15万円/各室

③売却時の減価償却分、光熱費増加分、日照減少分それぞれについては証拠上認められない。

とされた。

(平成12年3月24日 京都地裁)

マンション管理費

マンション管理費等の滞納と管理組合による競売請求

マンション管理組合が、管理費を延滞している区分所有者に対して、区分所有法59条に基づいて行った競売の請求が棄却された。

概要

マンションの区分所有者が、平成12年11月から平成18年1月まで169万円滞納した。マンション管理組合は、マンションの区分所有者に支払い督促を行い、銀行預金を差し押さえたが、預金残高がなく回収できなかった。そこでマンションの強制競売を検討した。しかし、多くの担保権が設定されており、無剰余とされることが予想され断念した。そこでマンション管理組合は、区分所有法第59条1項に基づく競売を請求した。

判決

マンション管理費の延滞が約170万円と多額であり、5年半にも及ぶ長期にわたる延滞は、区分所有法(マンション法)6条1項の”共同の利益”に反する行為であり、同法59条1項にさだめる、共同生活に著しい障害が生じているといえる。

区分所有法(マンション法)59条は、区分所有権をはく奪し、区分所有関係から排除するものであることから厳格に行うべきであり、先取り特権の実行、他の財産の強制執行などで回収できず、競売による以外にないことが明らかな場合に限るのが相当である。

マンション管理費延滞者は、長期滞納を謝罪し、マンション管理費を分割弁済の和解を希望しており、マンション管理組合は、延滞者の和解の希望を拒否して競売の途を選んだ。

マンション管理組合は、区分所有法(マンション法)59条1項の競売申し立て以外に管理費を回収の途がないとはいえず、同条の要件を満たすと認められない。よってマンション管理組合の請求は棄却する。

(東京地裁判決 平成18年6月27日)

まとめ

共同の利益に反し、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」でも、「もはや同条の競売による以外に回収の途がないことが明らかな場合に限る」とされ、和解の中で債権の回収の可能性があるとして競売の請求を認めなかった。

 

マンション競売後の延滞管理費はだれが負担する?

競売後、管理費延滞分については注意が必要です。以下に判例を記しますのでご覧ください。

 

競売によるマンションの買受人から、元の所有者に対して、延滞管理費の請求が認められました。

概要 Aは平成16年1月、B所有のマンションを競売により買い受け、その所有権を取得したところ、Bはマンション管理組合に対し、管理費、修繕積立金及び組合費を滞納していた。Aは、滞納分219万円を平成16年5月、マンション管理組合からの請求により代位弁済したと主張して、Bに求償金の支払を求めて提訴した。
本件競売手続では、現況調査報告書及び評価書には、平成15年6月現在の、Bの管理費等の滞納207万円がある旨記載され、物件明細書には管理費等の滞納分がある旨記載されていた。評価書は、上記時点の滞納分に見合う21%の減額(211万円)をし、これに基づき最低売却価格は795万円とされた。Aは競売に参加し、1,054万円で落札し、本件マンションの所有権を取得した。
Bは、本件競売物件の物件明細書等に明示されており、競売の最低売却価格からも既に滞納額が控除されているから、滞納分はXが負担すべきであるなどと主張し争った。一審地方裁判所はXの請求を全部認容したので、Bが控訴した。

判決 ①Bは、本件マンションの所有権がAに移転するまでの間の本件管理費について支払義務を負っている。
②建物の区分所有等に関する法律(マンション法)8条によれば、Aは、滞納部分について、Bの特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。
これは、集合建物を円滑に維持管理するため、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、債務者たる当該区分所有者の債務とその承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから、民法442条(連帯債務者間の求償権)は適用されないが、区分所有法(マンション法)8条の趣旨に照らせば、当該区分所有者と競売による特定承継人相互間の負担関係については、特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり、特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。自民党司法制度調査会(保岡興治会長)は16日、借金の担保となっている不動産を、裁判所による競売にかけずに所有者の意思で売却額などを決める「任意売却」を進めやすくする法案をまとめた。買い手が見つかった場合に抵当権1位の者が同意すれば、ほかの担保権者が1カ月以内に競売の実施を求めたり、5%以上高い価格での買い取り先を見つけたりしない限りすべての抵当権を外せる仕組みに改める。
したがって、Aは、滞納分につき、弁済に係る全額をBに対して求償できることとなる。

(東京高裁判決 平成17年3月30日)

 

競売後、延滞していたマンション管理費について、競落人が元の所有者に請求できることになります。

尚、任意売却の場合は、債権者側に精算項目として了解をいただき、決済時、又は決済時までににマンション管理組合に精算いたしますので、延滞分が残り、後から請求されることはありません。

 

マンション管理費時効

マンション管理組合が請求した前所有者の延滞管理費等について、5年を経過した部分は時効により消滅しているとされた事例
概要

マンション購入者Xが、平成10年3月、マンション売主Bよりマンション1室を購入。

Bは平成4年1月~平成10年4月まで、計173万円の管理費等を延滞。

マンション管理組合Yは、管理費等の支払い義務はマンション買主Xにあるとして、平成12年12月支払いを求めた。マンション買主Xは、管理費等の債権は民法169条の債権に該当し、5年間の消滅時効により消滅を主張、支払い期限から5年経過した平成7年12月までの104万円を消滅時効の援用をした。

原審は、Xの消滅時効の抗弁を排訴、Yの請求を容認すべきとした。そのためマンション買主Xが上告した。

判決

マンション管理費等の債権は民法169条の債権に当たる。

延滞マンション管理費のうち平成4年1月~平成7年12月までの合計104万円は、消滅時効が成立している。

(最高裁判決 平成16年4月23日)

まとめ

マンション管理組合は、管理費の延滞は従来から深刻な問題であり、本判決はその消滅時効という議論について5年間と結論を出しました。

マンション管理組合にとっては、時効の完成により債権が回収不可能になることは区分所有者に新たな負担となる可能性があり、時効の中断をより厳格に管理しつつ、滞納者に対することが求められます。

 

 

マンションの天井裏排水管からの漏水事故

概要

本件は、築年数の古いマンションの構造的によくある例で、上階の排水管がスラブ下を通り階下の天井裏に配管されていて、そこから漏水したケースです。

原告は階下の天井より水漏れ事故が発生したのは、天井裏を通っている排水管が原因として、その配管は区分所有者全員の共有部分であることの確認、そして、水漏れによる損害賠償義務のないことの確認を求めた。

判決

床下コンクリートスラブと階下天井板との間に配管された階上者専用の排水管は、「専有部分に属しない建物の附属物」にあたり、区分所有者全員の共用部分(区分所有法(マンション法)第2条4項)にあたるとした。よって同排水管からの漏水については、階上者の損害賠償責任は否定されました。

(平成12年 3月21日 最高判)

 

マンションの車庫は専有部分

マンション建物内の車庫が専有部分として認められた判例です。

概要
原告は、マンション建物1階、ロビー脇にある車庫は、及び車庫の裏にある倉庫は区分所有法(マンション法)3条に定める1部共用部分であると主張しました。その理由は以下のとおりです。

①本件車庫は、本件建物の敷地から直接入庫できるが、その入口には他と隔離されていない。したがって構造上の独立性を有せず区分所有の対象とならない。
② 本件倉庫は、本件車庫の裏側に位置し、倉庫として利用されているが、本件倉庫の内側には、本件建物の各専用部分に送る設備が配管され、各専用部分の元スイッチ及び共用部分への各スイッチ、電気メーター、ヒューズ等が設置されている。したがって利用上の独立性を有せず、区分所有の対象とはならない。

判決

共用設備が当該建物部分の小部分であり、実質的に排他的に利用ができ、共用部分の設備の保存、他の区分所有者の利用に及ぼすことがないとして、利用の独立性を認め、原告の訴えを退けた。

 

(昭和56年 6月18日 最高判)

マンションのピロティは共用部分

マンションのピロティに関して専有部分とされた神戸地裁(H9.3.26)、そして以下に記します共用部分とされた東京高裁(H7.2.28)の判例があります。ピロティに壁を設置したことが共同の利益に反するのかが争点になりました。

 

概要

専有部分の区分所有者であるY1がピロティ部分に壁を設け、物置として使用していたが、その後区分所有権がY2に譲渡、さらにY3に賃貸された。マンション管理組合の管理者Xは、Yらに対して壁の撤去、共用部分の明け渡しを請求した。

判決

現区分所有者であるY2、占有者のY3はマンションの共用部分である本件1階の吹き抜け部分をほしいままに使用・占有は、マンションの使用に関し区分所有者の共同の利益(区6条1項)に反するといえる。

区分所有法(マンション法)57条により、区分建物所有者らにたいし、被控訴人は本件1階に設置した壁を撤去する義務があり、吹き抜け部分にある一切の物品を撤去して、同部分を明け渡す義務がある。

(東京高判 H7.2.28)

 

完成された建物内の空間部分としてのマンションのピロティは、広場、集会所、ホールあるいは緊急時の避難通路としての用途を有しているから、建物の構造上、区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分として法定共用部分とするのが適当であるとされています。(マンション管理センター)。

マンション共用部分の登記がなくても共用部分として認められた

専有部分でも規約により共用部分にできます。そして、その規約共用部分はその旨を登記しなければ第三者に対して対抗できません。(区4条2項)

しかし、その対抗要件である登記がなくても「規約共用部分であると主張ができる」との判断が下されました。

概要

マンションを分譲、販売していた会社が洗濯室、倉庫を規約共用部分として所有し住民が共同して使用していた。(登記上は洗濯場、倉庫)本物件が競売に付され、A株式会社が落札、居宅事務所、事務所と変更登記し、Y管理組合に改修工事の工事届を提出したが、マンション管理組合はこれを認めなかった。

その後、Aが代表者の姉Xに区分所有権を譲渡、Xがマンション管理組合Yに対して専用使用権の確認、工事承諾を請求した。

第一審判決

共用部分の登記がされていなかったため、Yは第三者であるXに対抗できないとして、専用使用権の確認が認められたため、Yが控訴した。

第二審判決

建築建築当初からの規約共用部分としての利用状況等を知って洗濯室、倉庫を取得し、登記がないことを奇貨として競落後間もなく事務所に用途変更登記し、管理組合の共用部分であるとの主張を封じた競落人は、背信的悪意者の承継者であるとし、登記がなくても規約共用部分であることを主張できる。

東京高裁 判例 H21.8.6

マンション規約の変更が一部の区分所有者に特別の影響を及ぼす場合、規約変更は無効

マンションの規約の変更により区分所有者に認められていた屋上、外壁、敷地の無償の専用使用権を消滅させることは、その区分所有者の承諾が必要とされ、承諾のない規約は無効とされました。

概要

Y・・住居・店舗併用マンションの店舗部分の区分所有者で、屋上、外壁の一部、敷地に無償の専用使用権を  有していた。

X・・マンションの管理組合

Xが総会において、Yの専用使用権の一部を消滅させ、残りの専用使用権につき利用料金を支払うこととする規約の変更を決議し、消滅した専用使用権の使用停止、利用料金の支払いを請求した。

第1審判決がYの承諾を要せず、規約の変更が有効であるとして請求を認めたため、Yが控訴した。

 

判決

本件の専用使用権は、分譲の際、分譲者に留保された権利であり、共有者間で共有物の使用方法として合意されたものとして、債権的なものではなく、物件的なものと考えられる。

このような専用使用権でも、これを消滅させる規約改正の全てが専用使用権に特別の不利益を与えるかどうかは確言できない。

しかし、本件専用使用権が物件的な性質を有し、その設定された経緯からみるならば、その専用使用権者の同意無くしてこれを廃止する旨の規約改正は効力を生じないものと見るべきである。

(東京高判 H8.2.20)

 

類似判例

駐車場の無償の専用使用権を消滅させる集会の決議は、区分所有者の専用使用権に特別の影響を及ぼすものであって、その区分所有者の承諾のない規約変更は無効である。

(最高裁 H10.11.20)

 

リゾートマンションの管理組合が専有部分の用法として不定期の保養施設の範囲を超える使用の禁止、及び定住使用者の管理費の負担を多額にする管理規約の設定、変更は、当該区分所有者に受忍限度を超える不利益をあたえるものであり、特別の影響を及ぼすものであるとし、その同意を得ずに制定した管理規約は無効であるとした。

(東京高裁 H21.9.24)

マンションの不在組合員に2500円の住民活動協力金の支払い義務は特別の影響を及ぼすものではない

概要

X・・総戸数868戸の管理組合で、一戸当たりの管理費が一律17,500円と定められていた。

Y・・不在組合員17戸

本件マンションの賃貸物件が平成6年頃より増加し、不在区分所有者の数が170戸に達していたことから、平成16年の総会において、不在組合員に対して一律月額5000円の協力金を負担する旨の規約の変更がなされ、この決議に17戸が支払いを拒否、最終的に7戸に対して支払請求を提訴した。

(Xは控訴審において裁判所から協力金の金額を2500円とする和解案を受けて規約の変更を行った。)

第1審判決が請求を認めたため、Yらが控訴した。

 

控訴審判決は、Xが規約変更して、主として役員の報酬、必要経費を、不在組合員にのみ負担させる合理性はないとして、第1審判決を取り消し請求を棄却したため、Xが上告した。

 

判決趣旨

マンション管理組合を運営するにあたって必要となる業務及びその費用は、その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきであって、その分担が困難である不在組合員に対して、一定の金銭的負担を求め、不公平を是正したことは、必要性と、合理性が認められる。

組合費と住民活動協力金とを合計した不在組合員の負担は、居住組合員が負担する月額17500円に対し、約15%増しの月額20000円に過ぎない。

規約変更の必要性、合理性と、不在組合員が受ける不利益の程度を比較衡量、くわえて住民活動協力金の趣旨に反対し、支払いを拒んでいるのは、不在組合員の180戸のうち、5名の不在組合員にすぎないことも考慮すれば、当該規約変更は不在組合員において受忍限度を超えるまでということはできず、「一部の団地所有者の権利に特別の影響を及ぼす」に該当しない。

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