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1 中古マンションの任意売却の背景
景気浮揚対策として、新築マンションの購入者に対し、住宅金融支援機構(当時の住宅金融公庫等)の「ゆとりローン」・「ステップ返済」、自己資金が無くてもローンの組める仕組み「100%ローン」、親子2代で組める長期返済期間の組める「親子ローン」、そして「住宅ローン減税」などの税制面での優遇など、これでもか、というぐらいの政策がとられた時期がありました。
この政策の結果、本来ならば購入できなかった低年収者層の人たちも、あおられて購入することになりました。冗談で、高校生でもマンションが買える、などと揶揄されました。
そして、土地価格が徐々に下がっているにも拘わらず、新築マンション購入者に対しての優遇策がとられたことにより、新築マンション価格は本来下がるべきものが高止まりして、実際の相場から大幅に乖離することになってしまったのです。
その結果、新築マンション購入者が何かの理由(失業、倒産、病気、離婚等)で、マンションを売らざるを得なくなってしまった場合には、「中古落ち」した中古マンションとなってしまいますので、新築マンション購入金額の3割程度の価格で売却をせざるを得ない状況にもなりました(地域によって乖離がある)。
新築マンションを100%ローンで購入し、その価格の30%で売却することは、長期住宅ローンの支払いは初期の支払いはほとんどが利息ですから、住宅ローンの元本はほとんど減っていません。とてもローンを完済できるものではありません。
以上のように、マンションの分譲時期、分譲場所(地域)により、任意売却マンション・競売マンションが発生してしまうケースが多くなりました。
2 中古マンション任意売却Q&A
ケース1 共有
Q中古マンションを兄弟で所有しています。持ち分はそれぞれ2分の1です。親から相続し、第3者に賃貸にして賃料を得ています。1年前に空室になり、賃料収入が途絶えました。管理費も兄弟半部負担し支払うことになっていましたが、弟が支払わないので困っています。マンション売却も弟に相談しましたが、弟は売却する意思はないとのことです。この状況に管理組合の管理費の督促もあり困っています。今後のマンション管理が煩わしいので売却したいのですが、弟の協力は望めません。方法はありますか?
A 共有する中古マンションを売却するには、共有者の承諾が必要になります。但し、中古マンションの共有者は、それぞれに、中古マンションの管理に関しての費用を負担し、支払う義務があります。そして、他の共有者がマンションの管理に関する費用の支払いをしない場合は、その果たすべき義務を果たしていないことになります。1年以上にわたり義務を果たさない場合は、その持ち分に応じた償金(この場合はマンション価格の半分)を支払い取得することが出来るとされています。(民法第253条)
また、共有者は、いつでも他の共有者に分割請求できる(民法第256条)ことになっていますので、他の共有者に持ち分に応じた償金を支払い、その持ち分を取得することも出来るし、逆に償金を受けて、その持ち分を引き渡すこともできます。
なお、分割の協議(話し合いが)まとまらない場合には、裁判所に分割の請求をすることが出来ます。(民法第258条)
①まず兄弟お互いが話し合いで解決し売却する。
②兄弟で分割協議し、どちらかの名義にする。
③、①②で纏まらなかった場合には、裁判所に分割請求する。
ということになります。
ケース2 床鳴り
Q 任意売却物件の中古マンションを購入し、入居後に台所の床鳴りがすることに気づきました。契約の時点では、全く解りませんでしたし、不動産仲介者の説明も、売主の告知もありませんでした。そこで、その旨を不動産仲介者に通知して、売主及び不動産仲介者に補修を請求しました。ところが、売主は、瑕疵担保責任は負わない契約なので、責任は取れないとのことでした。この補修に関しては、請求できるものなのでしょうか。また誰が負担すべきものなのでしょうか?
A 任意売却の場合、売主には責任能力(金銭的)が無いとみなし、売買契約において瑕疵担保責任を負わない特約条項を付けます。
しかし、売買契約書に瑕疵担保責任の免責を盛り込んだとしても、売主はどのような場合でも責任を免れるということではありません。
民法では、売主の瑕疵担保責任を負わない旨の特約を定めた時はその特約は有効です。しかし、「知りながら告げなかった事実」についてはその責任を免れることは出来ない(民法第572条)。と定められています。これは任意売却であっても適用されます。
売主が住宅として日常の生活を行っていたことを考えますと、その床鳴りを当然知っていたものと推測できます。
但し、通常に使用していて、売却後暫くの間空室の状況で、室内が乾燥収縮し床鳴りがすることになったと、考えることも出来ます。また、売主の入居中は家具などの置かれた状況で、家具の重さで床が納まっていたものが、家具等の搬出で、床組みが緩んでしまうことも考えられますので、頭ごなしに売主の告知義務違反と決めつけられません。中古マンションの売主が本当に床鳴りに気づいていなかった場合にはこの瑕疵担保責任は免責となり、売主又は仲介者の責任を問うのは難しいと思います。
ケース3 競売
Q 今、住んでいるマンションの管理費を3年ぐらい延滞し、その金額が遅延損害金を含めて約120万円ぐらいあります。管理組合から再三再四、請求されていましたが、先日、マンションの理事会で、管理費長期延滞者に対して、競売の申し立てを行う旨の決議がされました。いま、引っ越しなどは子供の都合で出来ない状況です。今後の進展がどのような手続きに進められていくのか、とても不安です。
A マンションの理事会で競売の決議は効力はありません。マンション総会(集会)の決議(議決権の4分の3)が必要です。
マンションの多額の管理費延滞により「共同の利益」に反するということで、マンション管理組合が競売を申立て、それを裁判所が認めた裁判例はあります。しかし一般的には、裁判所がマンション管理費延滞で競売申請を認めるには、相当厳しいハードルを設けています。区分所有法第59条では、「区分所有者の共同の生活の障害が著しく、他の方法ではその障害を除去し共用部分の利益の確保その他区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」の状況であることを、裁判所は競売の要件としています。
相談者様のマンションが、管理費延滞により管理組合が上記の状況にあるとは、到底考えられません。また、裁判所は、管理組合に対して、競売申し立て以前に管理費延滞を解決するためにどのような努力を行ったのか、他の方法の限りを尽くしたのか、などのハードルを設けています。ですから、容易に競売の申し立てが受理されないようになっています。
また、下記「マンションの管理費について」を参照ください。
3 マンション投資の失敗・リスク
マンション投資、特に新築のマンションを投資用として購入することは大きなリスクがあり、また途中で返済が出来なくなる等の失敗が後を絶ちません。
これらマンション投資の失敗は、
①新築マンションの価格設定は、購入者の利回り軽視の「積み上げ式価格設定」となっていること
新築マンションの販売価格「積み上げ式価格」は
・土地の仕入れ価格
・マンション建築代金
・経費(土地仕入れ仲介手数料、販売会社への仲介手数料、建物設計料、金利、登記料、広告宣伝費、等)
・分譲会社の利益
で構成されて販売されます。実需の居住用マンションの場合は「利回り(賃貸料を販売金額で割った数値)」は考慮されていません。
アメリカの投資家は、新築物件は購入しないとされています。それは上記の理由によるものと言わざるを得ません。
②マンション特有の、分譲から始まり、管理規約、管理組合運営、管理会社等の介在する関係者及び関係業者の影響がある
マンションは専有部分と共用部分とで構成された、いわば区分所有権建物です。この共有部分については、管理組合が結成され管理規約に基づいて管理されます。その管理を管理会社が一括して委託をうけて管理することが一般的です。
これらマンションの管理を行うにはその費用が発生しますが、その費用としては
・ 管理会社管理委託料、EV保守、日常清掃、電気料等の日常の管理費
・共用部分の修繕工事
大きく分けて以上の出費がありますが、これら費用を管理会社主導の外注で行う場合には、市場原理が働くことは無く、適正な金額での発注とはならず、要するに高い管理費又は修繕工事が横行する構図となってしまいます。
マンションの組合員はそのほとんどが無関心で管理会社に任せきりとなっているのが現状です。この無関心がマンション所有の原価を底上げし、投資利回りを低下させる元凶となってしまいます。
また、小規模(50戸)程度のマンションでも管理人を夫婦で住み込み常駐させ、その日常生活の家賃として部屋を無償で提供し、電気、ガス、水道等光熱費、電話料金を自由に使いたい放題、その経費は全てマンション所有者が負担とする管理形態は、マンション所有者に無駄な費用を負担させるものとなります。
また、マンション管理規約において、役員(理事、監事)の就任規定が、そのマンションに「居住」していることが要件として定められているマンションが多いのです。つまり、マンションは居住している組合員が理事に就任し組合が運営されます。一方投資用で所有している組合員は理事には就任できず、部外者扱と言っても過言ではありません。さらに、最高裁の判例では、外部所有者に対して、居住している組合員よりも多くの管理費徴収が認められたケースがあります。つまり、外部所有者(投資目的で所有)は、管理運営の参加資格(役員の資格)が剥奪される一方で、管理運営するマンション居住組合員にその負担をかけるとして、管理費を多く払わされている事例もあります。
4 マンション管理費について
1、マンション管理費延滞の処理について
マンション管理費の延滞金額が多額になってしまい、任意売却が暗礁に乗り上げてしまうケースもあります。マンション管理規約には、マンション管理費の遅延損害金を、年14%ぐらいの高い利率で規定しているものもあります。延滞が長期にわたってしまった場合、その額は数百万円の上ることもあります。
まず、
①マンション管理費の延滞はいつからか、 ②最終の支払い期限はいつの分からか、 |
を、確認し、もし、②の支払い期限が5年以上前のものであるならば、管理組合宛てに内容証明郵便(期日確定のため) で時効を援用する内容の書面を発送することをお勧めいたします。
平成16年4月23日の最高裁判所の判決で
マンション管理費等の債権は民法169条の債権に当たる。 延滞マンション管理費は5年で、消滅時効が成立する。 |
とされました。
この時効の援用をしない限り、5年の消滅時効を過ぎても、時効は有効にはなりません。つまり、援用しない限り、債権者(管理組合)の請求を止めることはできません。
また、この援用の書面の書式は決まりがありませんので、①日付、②通知人(あなた)、③被通知人(債権者)、④債権額、⑤支払い期限より5年以上経過して消滅時効が成立していること、⑥今後は請求しないこと等を記載しいれば十分です。援用の例へ
5年以内の管理費については、現状の説明(①管理費の免除が無いと任意売却が成立しないこと、②他の債権者も債権の一部免除を承諾してもらっていること等を説明し、債権者平等の原則より、管理組合の免除も銀行からお願いされた旨)を行い、交渉する。
2、マンション管理費に関連する法令
マンション管理費に関連する法令を記載します。直接的にマンションの任意売却において表舞台に登場することはあまり考えられませんので小文字で表記しておきます。飛ばして読んでください。
・区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
各共有者は、規約に別段の定めが無い限りその持ち分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
・区分所有法第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
・区分所有法第59条(区分所有権の競売の請求)
区分所有法第57条~59条に関しては、マンションの管理費等(修繕積立金を含む)を長期間にわたり延滞し、マンションの修繕計画等に重大なる影響を及ぼすような場合に適用されます。ただし、裁判所はこの競売の請求を認めることについては、相当高いハードルを設けています。
仮に、任意売却するマンションに管理組合の差し押さえがついて、区分所有法59条に基づく提訴がなされている場合には、当然管理組合に交渉して訴訟の取り下げ、差し押さえの解除をしなければなりません。
・マンション標準管理規約第25条(管理費等)
・マンション標準管理規約第26条(承継人に対する債権の行使)
・マンション標準管理規約第27条(管理費)
・マンション標準管理規約第28条(修繕積立金)
注・・実際の任意売却するマンションの管理規約を確認する必要があります。
5 マンションの管理規約
マンションの善し悪しを決定づけるのがマンション管理規約です。「マンションはその管理で買え」といわれていますが、その管理のファクター①管理規約、②管理人形態(ア管理人常駐、イ通勤、ウ巡回)、③管理方式(ア自主管理、イ一部委任(自主管理の一種)、ウ一括委託)が大きな括りとなります。
そしてさらに、ハード面でいえば、①もともとの新築時のグレード、②立地条件、③周りの環境
ソフト面になると、①長期修繕計画の有無、②管理費の延滞等、③マンション内のトラブル、④管理組合運営が適正かどうか等、
様々な要素が組み合わさっています。それらを総合して一般的にマンションの管理といわれています。
その中で特にマンション売買(任意売却を含む)取引において、不動産業者の宅地建物取引主任の説明義務が課せられている項目(マンション重要事項説明書)は以下の通りです。
1、共用部分に関する規約の定めの有無
規約に法定共用部分・規約共用部分の明記があるか
・共用部分の持ち分の割合は、各専有面積の割合によるのか、そのほかの定めか
2、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定めの有無
用途の制限(住宅、店舗、事務所等)
利用の制限(例えば、ペットの飼育、ピアノの使用、フローリングの制限、等)
3、専用使用権に関する規約の定めの有無
①一棟の建物及びその敷地の専用使用権について(例えば、バルコニー、専用駐車場、専用庭、専用倉庫、ルーフバルコニー)
②対象物件に付随する専用使用権について(上記①と同じ)
4、所有者が負担すべき費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めの有無
これは、過去においてマンションの争いが多発した(例えば、元々の地権者に得に有利な条件で等価交換を行っていたケース) ことにより、法令の整備及び不動産業者への通達がなされました。
5、 計画修繕積立金に関する事項で
①修繕積立金制度の有無
②当該住戸の計画修繕積立金等
・月額の金額
・滞納額
③当該管理組合に既に積み立てられている計画修繕積立金
・総額の金額
・滞納額
④計画修繕積立金の預金名義人
6、通常の管理費用の額
①月額の金額
②当該住戸の滞納額
③当該管理組合の滞納額
7、管理の委託先
①管理形態
②管理の委託先 ・氏名 ・住所
③マンション管理適正化法による登録番号
8、建物の維持修繕の実施状況の記録
①共用部分
②専有部分
9、その他として
①区分所有法のほか管理規約・使用細則等を買主は売主より継承して遵守すること。
②管理費、修繕積立金その他集会の決議により区分所有者が負担すべき費用について滞納がある場合は買主にその支払い義務が継承される。(この②の延滞金は任意売却の場合は、債権者の承諾、管理組合と協議して買主には支障が出ないよう処理されます。)
如何に管理規約がマンションの売買において重要であるかがご理解いただけると思います。
6 中古マンションの特性
中古マンションは不動産としての地位が確立されておりますが、一般の不動産とは異なる以下の点があります。
①マンション共用部分の共有
中古マンションの任意売却で土地及び建物の不動産と大きく異なる点は、共用部分を共有し、専有部分の共同体を構成する形態です。
共同住宅つまりマンションは「区分所有法」で定められています。これはマンション法などともいわれたりすることもありますが、第1条から第72条までの比較的少ない条文ですが、実はこれが法曹界では難解な法律に例えられる一つに該当します。弁護士等の法律家にとっても苦手とする方がいると聞きます。
このマンション法(区分所有法)は「共有」という規定が定められています。中古マンションは専有部分と共用部分に分けられますが、それ以外のものは存在しません。つまり、中古マンションはその所有者が使用する専有部分とそのマンション全員で使用する共用部分で構成されています。
マンション法(区分所有法)は主にその「共有する」という法律行為に関することが定められています。昭和37年に旧区分所有法が定められ、それ以前は、民法第245条からの「共有規定」が適用されていましたが、実情に合わなくなり区分所有法(旧法)が定められました。
②マンション管理費
中古マンションの任意売却でネックになるのが管理費の延滞です。延滞管理費は債権者がその分を負担し、任意売却代金から管理費の返済に回してもらうことが一般的に行われています。ただし、金額が多額に上る場合は債権者が承諾する金額はその一部となり、その他の残額に関してはマンションの管理組合との交渉となります。その交渉は困難です。その理由を下の ロ 内に書きますが読み飛ばしてください。
マンション管理組合は、この延滞管理費(債権)を一部放棄(免除)、又は全額放棄(免除)するには、総会の普通決議・特別決議ではその債権を免除・放棄出来ないのです。つまり、マンション区分所有者の全員の合意を取り付ける必要があるのです。任意売却する側にとっては、債権を放棄するのかどうか、年一回の総会を開くのを待っているわけにもいきませんので、理事会に根回しして、組合員全員の承諾をとらねばなりません。(延滞管理費つまり管理組合にとっては債権となりますが、この債権の放棄は財産の処分(共有物の変更)ということになり、マンション法(区分所有法)の適用外となるため、民法が適用されます。
そして、民法第251条:各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることが出来ない。が適用となり、区分所有者全員の同意が必要となります。但し、マンション管理組合の中でも法人化しているマンション管理管理組合法人の場合は、総会での普通決議で債権放棄可能となります。ですから、マンションの管理組合の法人化しているか否かも注意すべきポイントの一つになります。 |
いずれにせよ、マンション延滞管理費の免責の作業は相当高いハードルであるということです。
③マンションは登記が異なる(敷地権という権利)
マンションの謄本を法務局で申請し取得できますが、中古マンションの謄本には、建物全体と土地と専有部分とが一緒に記載されています。
不動産は、一物一権主義が原則です。(一戸建ての場合には土地の謄本と、建物の謄本が分かれて取得)
ですから、不動産の売買は、物件の取引ですから土地と建物は別々の取引ができます。例えば土地はAさんへ、建物はBさんへと取引することは可能ですが、中古マンションの売買においてはこれが原則(注)できません。
ここに他の不動産とは大きな違いがあります。中古マンションの土地は所有権(共有)でも借地権(準共有)でも敷地権と表記されて登記されています。この敷地権となっているマンションの売買において売り主から買主への所有権の移転登記は、建物に付随する形で土地の敷地権が登記官が職権でおこなわれることになります。
また、建物においても専有部分と共有部分(エントランス、廊下、階段等)持ち分がありますが、この専有部分と 共用部分の持ち分を分離しての売買はできません。(現実に売買し、登記しようとしてもこれら法定共用部分は登記されていませんので不可能ですが)
(注)マンションは広い敷地に分譲業者が区分建物を建てて分譲するわけですが、分譲業者が建物を建てた段階ではその敷地は「敷地利用権」ですが、その敷地利用権が登記された時「敷地権」となります。その、敷地利用権の段階であるならば、建物と土地と分けて取引することも登記法上可能となります。 |
④管理規約
中古マンションは共同住宅ですから、共有部分の利用に関する取り決め(管理規約)を各共有者が集まって決めて(総会決議)文書にします。この管理規約は現在ではほとんどの中古マンションで作成されて、それを基に管理組合の運営がなされていますが、中には、規約も無く、総会の開催もされていない中古マンションもあります。
国土交通省で作成したマンション管理規約の見本として「マンション標準管理規約」がありますが、ほとんどの中古マンションが、その中古マンションの実情にあわせて準用しています。
但し、中には独自の取り決めを行っているものもありますから、規約の中身はひと通り目を通しておかなければなりません。例えば①ペットの取り決め、②駐車場の取り決め、③役員の規定、④一部組合員への特別有利な条件等。これらのことは任意売却の契約時において説明する必要(重要事項説明)が義務づけられています。特に④のような組合員間の不衡平(不公平)のあるものは後日争いの元になりますので注意しなければなりません。
⑤総会議事録、理事会議事録、長期修繕計画書
中古マンションは、25年~30年のスパンで長期修繕計画書が作成され、そして12~14年サイクルで修繕工事が行われます。その修繕工事に関連することで問題になるのが、工事費の不足を補うための「修繕一時金負担金」です。
その問題とは、中古マンションの任意売却前に、ちょうど修繕工事の計画され、その実行するのに積立金が不足することから、区分所有者の全員から不足分を徴収するとされた場合です。仮に、仲介業者がこの事実を知らず買主に対して、この中古マンションの売却を仲介し、取引成立後、買主が多額の工事一時負担金を負担するはめになった場合はどうなるのでしょうか。
まず、仲介業者は、宅建業法第35条(重要事項説明義務)違反、及び民法第644条の受任者の善感注意義務に反し債務不履行となり買主より損害賠償請求を受けることになります。次に、売主に対してはどうでしょうか。
任意売却の契約では、売主が瑕疵担保責任を負わないことを条件に契約締結しますが、この瑕疵担保責任は物件の見えない(その時には知らなかった)キズを指します。しかし、この告知されなかった修繕工事一時負担金は、瑕疵担保責任条項には該当致しません。
修繕工事一時負担金は、事前に総会など又は長期修繕計画等で知れることであり、これを知らなかったとする売主及び仲介業者の言い分は通らないことです。当然売主としては知っていることとされ、売り主の責任も免れません。(マンション買主と媒介業者が和解した事例があります。)
⑥駐車場専用使用権
駐車場の利用が引き継ぎ出来る旨の説明で中古マンションを購入した買主が、マンション管理組合から、前所有者の使用権は引き継ぎ出来ないとの説明を受け、結局駐車場を借りることは出来ずに、不動産仲介業者に敷地外駐車場使用料相当分の損害賠償を求められる事例があります。マンション管理規約には、この駐車場の専用使用についての取り決めが記載されており、このところを十分に注意しなければなりません。
⑦その他、宅地建物取引業法
宅地建物取引業法施行第16条の2の第4号、5号並び建設省通達関連
売買対象部分の管理に額、修繕積立金の額、その部屋の管理費等の延滞額、マンションの修繕積立金の総残高、管理費等の延滞金総額、駐車場(バイク、自転車)に関する料金、及ぶ空き状況、管理形態(管理人が住み込み、通勤、巡回)管理費の改定予定、⑥の大規模修繕工事の予定等を調査しなければなりません。尚、有料で管理会社から、管理規約、長期修繕計画表、総会議事録、等が取得できます。
メールによる相談は有料です。
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