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民法1
基本原則 民法第1条
(基本原則)
第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。3 権利の濫用は、これを許さない。
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公序良俗(民法第90条)
次のような行為は公序良俗に反することです。
①経済の基本的秩序に反する行為。
②家族の基本的秩序に反する行為。
③個人の尊厳、平等に反する行為。
④犯罪をさせる行為。犯罪をさせないために金品を与える行為。
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
心裡留保(民法第93条)
心裡留保とは、真意ではない意思表示するで、例えば、冗談で契約等をしてしまうことをいいます。
原則として①その意思表示は有効となり、
②次のいずれかに該当する場合は無効となります。
ア、相手が冗談だと知っている場合。
イ、相手が過失がある場合。
条文・・ 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
虚偽表示(民法第94条)
虚偽表示は、相手方と通じて、内心の意思とは異なる意思表示のことです。例えば、強制執行を免れるために、財産等の仮装売買等が該当します。虚偽表示は
①意思表示は無効
②善意の第3者に対して無効を主張できない。
条文・・第94条1項 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2項 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
錯誤(民法第95条)
表意者(意思表示)が、自分の勘違いで意思表示することです。錯誤による意思表示は無効となりますが、勘違いのものは何でも無効となってしまったら、取引に支障をきたします。そこで、錯誤による無効を主張するには次の要件を満たす必要があります。
①要素の錯誤であること・・例えば、不動産の契約において、重要な部分についての錯誤をしていた場合等で、些細な部分の錯誤ではその無効を主張できません。
②表意者(意思表示)に重大な過失がないこと
条文・・ 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
詐欺・脅迫(民法第96条)
詐欺とは、他人を欺き、騙す行為です。詐欺により意思表示をした場合は、
①表意者は契約を取り消すことができます。
②取り消しは善意の第3者に対して対抗(主張)できません。
脅迫とは、相手を畏怖し、それにより意思表示させることです。
①表意者は契約を取り消すことができる。
②善意の第3者に対しても取り消しの主張が出来る。
条文・・詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3、前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
代理(民法第99条)
代理とは、その権限内で、代理人が本人のために行うことを表示して、意思表示し、全面的に本人に契約の効果が帰属することです。代理が成立するには次の要件があります。
①代理行為
②顕名・・代理人が、相手に対して代理人であることを意思表示する。
③代理権の存在(書面不要)
条文・・代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2、前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
表見代理(民法第109条、民法第110条、民法第112条)
表見代理には次の3つがあります。
①代理権授与の表示による表見代理・・これは白紙委任状などの提示をうけて、相手方が代理権が存在すると考えてしまうのも仕方ない場合。
②権限外の行為の表見代理・・一応の代理権はあるものの、本人が与えた代理権限をこえて行ってしまう場合。例えば、マンションの賃貸の代理を与えたら、売却してしまった等。
③代理権消滅後の表見代理・・かつて代理権があったが、その行為の時には代理権が消滅して有効でない場合。
条文(民法第109条)・・第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
条文(民法第110条)・・前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
条文(民法第112条)・・代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
無権代理(民法第113条)
代理権の無い者が、代理人として契約を行った場合をいいます。代理行為の成立には、代理権の存在が要件ですから、代理権の無い者の代理行為は、代理とはならず、本人に効果が帰属しません。ただし、これだと契約の相手が害されてしまいます。そこで次のように定められています。
①本人
ア、追認・・無権代理行為を有効にする。
イ、追認拒絶・・無権代理行為を無効にする。
②相手
ア、催告権の行使・・本人に追認するか否か催告できます。
イ、取り消し権の行使・・契約の相手方は取り消すことができます。
ウ、無権代理人への責任追及
エ、表見代理の主張
条文・・(民法第113条)代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
2、追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。
期限の利益(民法第136条、民法第137条)
期限が付けられることにより、当事者が受けることのできる利益を、期限の利益といいます。
期限の利益は、債務者のための設けられており、期限の利益は放棄することも可能です。
また、債務者が担保を喪失、あるいは破産手続き開始決定等の信用失墜行為によっても喪失します。
条文(民法第136条)・・期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2、期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害することはできない。
条文(民法第137条)・・次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
時効の援用(民法第145条)
消滅時効の期限が到来しても、そのまま放置していても、効力は発生しません。時効により利益を受ける意思表示をしなければなりません。この意思表示が「援用」です。この援用をして初めて債務が消滅するのです。
条文・・(民法第145条)時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。
時効の中断(民法第147条)
時効があるから、10年、20年経過したものが時効になり消滅するのではこまります。そこで、時効をリセットする制度が「時効の中断」です。時効の中断事由は次のとおりです。
①裁判の請求
②支払い督促の申し立て
③和解、調停の申し立て
④破産手続き参加
⑤催告(内容証明郵便等)
⑥差し押さえ、仮差押え、仮処分
⑦承認
条文・・(民法第147条)時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認
支払督促 民法第150条
支払い督促は、民事訴訟法第39条に規定する期間(仮執行宣言を求めるときから30日以内)に仮執行宣言をしないと無意味になります。この際には、時効中断の効力は生じません。
(支払督促)
第150条 支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条 に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
和解及び調停の申立て 民法第151条
調停の申し立ては、相手方が出頭せず、又は和解・調停が整わない時は、一か月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効果は生じません。
(和解及び調停の申立て)
第151条和解の申立て又は民事調停法(昭和26年法律第222号)若しくは家事審判法(昭和22年法律第152号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を生じない。
破産手続参加等 民法第152条
債務者が、破産手続きの開始をうけた場合、債権者は一定の期間内に債権額を届でます。この届け出が破産手続き参加となり、時効中断の効力があります。しかし、債権者が取り下げたり、却下された場合はその限りではありません。
(破産手続参加等)
第152条破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。
催告 民法第153条
権利の主張(催告)は、口頭、普通郵便、内容証明郵便問わず、6か月以内に裁判上の手続き(裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分)に入らないと、権利主張の効力は無くなります。
よって、時効の中断の効力も無くなります。
(催告)
第153条催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。
差押え、仮差押え及び仮処分 民法第154条
強制執行は、公文書である債務名義(判決、和解調書、調停調書等)に基づきなされます。
この債務名義がない場合でも、債権者は、将来の強制執行に備えて、裁判所に仮差押え、仮処分を申し立てることが出来ます。
この差し押さえ、仮差押え、仮処分につて、権利者の請求、規律により取り消されたりした場合には、時効中断の効力は生じません。
(差押え、仮差押え及び仮処分)
第154条 差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
承認 民法第156条
権利を承認すれば時効は中断します。
被保佐人や被補助人が、保佐人・補助人の同意を得ないでその時効にかかろうとしている権利を承認すれば、時効は中断します。
(承認)
第156条 時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力又は権限があることを要しない。
消滅時効(民法第166条)
一定期間、その権利が行使されなかったことによって、その権利が消滅してしまいます。所有権や、占有権は消滅時効にはかかりません。債権の場合は一般債権が10年で時効、また、マンションの管理費等は5年で消滅時効にかかります。
条文(民法第166条)・・消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2、前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
時効 民法第167条
個人間の賃借金・不当利得返還請求権、商事以外の契約不履行による賠償金、物品金銭の返還請求権の時効は10年
特許権、所有権以外の財産権の時効は20年
第167条
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
定期給付債権の短期消滅時効 民法第169条
地代家賃などの賃借料、利息、月賦などの債権は5年で消滅時効となる。
(定期給付債権の短期消滅時効)
第169条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
判決で確定した権利の消滅時効 民法第174条の2
確定判決、裁判上の和解、調停に基づく請求権は消滅事項は10年となります。
(判決で確定した権利の消滅時効)
第174条の2 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
共有物の使用(民法第249条)
各共有者は、共有物の全部について、その持ち分に応じた使用をすることができます。持ち分に応じて使用時間時間、使用回数、等で使用制限が認められます。マンションでは共用部分を共有することになり、この規定が関連します。
条文・・(民法第249条)各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
共有持ち分の割合の推定(民法第250条)
共有持ち分とは所有権の持分であり、共有者間で定めます。共有持ち分がはっきりしない場合は、各共有者の持ち分は、等しいものと推定されます。マンションでは分譲時に定められています。区分所有法及びマンション標準管理規約においては専有部分の床面積の割合に応ずるものと定められていますが、マンション規約で別段の定めが可能です。
民法第250条・・各共有者の持分は、相等しいものと推定する
共有物の変更(民法第251条)・管理(民法第252条)
共有物の変更・管理は次の通りです。
①保存行為・・ア、共有物の現状を維持することで、
イ、各共有者が単独で行える。
ウ、具体例としては、保全行為、不法占有者への明け渡し請求(マンションの引き渡し請求)
②管理行為・・ア、共有物を利用、改良する行為。
イ、各共有者の持ち分割合の過半数で行う。
ウ、具体例、共有物の賃貸借契約の締結・解除
③変更行為・・ア、共有物の形質を変える。
イ、共有者全員の同意で行う。
ウ、具体例、売却、処分、形状変更、改築。
条文 民法第251条・・各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
民法第252条共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
共有物について生ずる費用(民法第253条)
共有物の管理費用は、各共有者がその持ち分割合に応じてふたんします。共有者のうち義務を果たさず1年以内に履行しない場合は、他の共有者は相当の償金を支払って、その持ち分を取得できます。例えばマンションの管理費等を共有者が支払わない場合で、その金額を支払わなければ、その償金を支払ってマンションの持ち分を取得出来ます。
民法第253条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
共有物について共有者がもつ債権(民法第254条)
共有物について共有者の一人が他の共有者に対して持つ債権は、その債権を譲り受けた特定承継人からも取り立てることが出来る。マンションの例では、管理費を延滞した売主より購入したマンション取得者はその延滞管理費を承継します。
民法第254条 共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。
持ち分の放棄・共有者の死亡(民法第255条)
共有者がその持ち分を放棄したり、相続人がいない時には、その持ち分は他の共有者にもちぶんわりあいに応じて帰属します。マンションを共有している共有者がその持ち分を放棄した場合には他の共有者にその持ち分割合に応じて帰属します。
民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
共有物の分割請求(民法第256条)
各共有者は、いつでも共有物の分割請求を求めることが出来ます。ただし、5年を超えない範囲において分割をしない契約をすることもできます。マンションの例で、専有部分を共有している場合には、その持ち分はいつでもその持ち分の分割請求が出来ます。
民法第256条 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の 契約をすることを妨げない。
2、前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができな い
留置権(民法第295条)
留置権とは、他人に物を占有しているものがそのものに関して生じた債権を有する場合、その弁済を受けるまではそのものを留置することにより弁済を間接的に強制する法定担保物件です。
留置権の成立要件
①留置物に関して生じた債権であること
②債権が弁済期にあること
③留置権者が他人の物を占有していること
④占有が不法行為によって生じたものでないこと
例えば、マンションで考えられるケースとしては、比較的高額でローンを組んで設置する、エコ給湯などです。
民法第295条 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適 用しない。
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