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競売のメリットデメリット
債務者は競売をどのようにとらえればいいのでしょう。競売は、債務者にとってメリット、デメリットがあります。
♥競売のメリット
♥安く自己競落できる可能性がある。
競売される不動産が、人気のない地域で誰も見向きもしない物件であれば、入札されない可能性もあります。そうすると、特別売却となり、先着順で落札者を決めます。それでも希望者がいなければ、再度売却基準価額の見直しがされ、1回目よりも最低売却基準価格を下げて行います。それでも入札者がいなければ同じことを3回繰り返し行われます。そこで、親戚・知人に入札してもらい、落札し、そのまま住むこともできます。ただし、債務者及び同居者は入札できませんので、同居していない親族、知人にお願いすることなります。
♥強制執行(立ち退き)まで長く住める。
落札者は残代金を裁判所に納付した日から6か月以内に、民事執行法第83条(引渡命令)の申し立てができます。申し立てをうけた裁判所は、要件を備えていると認めた場合は競売不動産を引き渡すべき旨の決定をします。引渡命令が相手方に送達され、相手方から民事執行法第74条(執行抗告)の不服申し立てがなければ1週間で強制執行ができる効力が発生します。無駄な抵抗にはなりますが、執行抗告すれば更に時間が稼げます。
♠競売のデメリット
♠債権者に返済できる金額が少なくなる。(残債が多く残る)
競売の場合、多くの人(不動産鑑定士、執行官、)がその手続きに介在し、費用がかかります。その費用は予納金として債権者が支払いますが、最終的には落札金額から差し引かれ、つまるところ、債務者が負担します。
また、遅延損害金(年14.6%)も多額になります。たとえば、
①1000万円で年間146万円にもなります。そして、
②落札金額は実勢価格より2~4割低い金額で落札されることが多いのです。落札金額から
③予納金などの競売の手続き費用などが差し引かれ、
競売による場合は多額の借金が残る場合が多いのです。
さらに、裁判所での閲覧期日が2週間という短さの期間で、高額で入札する人が出現する機会は限られているのです。手続きには、だらだら長くかけますが、入札者に対して伝える時間は短いといえます。
♠何をやるのも一人です。
競売の途を選択すれば、債権者、落札者との交渉など全て一人で行うことになります。心細い状況が長く続きます。
♠大量のチラシ、DM、郵便物・(身元不明の人々の訪問)
裁判所に情報が公開されますと、競売を専門とする業者、DM、郵便物、そして訪問者などあります。
♠権利の瑕疵は免責にならない
債務者は元の所有者として、競売後、物件(マンション、不動産)に物理的な瑕疵については瑕疵担保責任は問われませんが(免責)、ただし、権利の瑕疵については免責されません。
また、債務者が延滞していたマンション管理費等については、後から請求される可能性があります。延滞管理費は債権となりますから競売されたとしても瑕疵担保の免責にはなりません。
競売だから、後は”関係ない”と、責任から解放されるものではありません。(東京高裁判決 平成17年3月30日)
任意売却か競売の選択
住宅ローンを延滞すると住宅支援機構の場合、任意売却を勧める通知書がきます。その時に任意売却するか、そのまま放っておいて、競売とするかの決断をしなければならない時がきます。
債務者は
①借金に早くけりをつけたい。
②手持ち資金を残したい。 ③面倒なことはしたくない。 ④残債については少ない金額で解決したい。 |
だれでも、このようにできればと思うはずです。
次に(債権者)債権者の担当者としてはどうでしょうか、
A できるだけ多く回収したい。
B 手間をかけたくない。 C 費用をかけたくない。 D 時間をかけたくない。 |
金融マンはエリートです。しかし、債権回収に回される方たちは、銀行マンの出世コースを外れた人たち、もしくは銀行マンになれなかった人たち、と聞き及びます。好き好んで債権回収の仕事をしているとは到底思えません。回収担当者は、あくまでビジネスライクで、手間をかけずに早く処理して、早く家に帰りたいのです。
また、常に何百件もの案件を担当し、そのなかで何件の案件を処理し、債権をいくら回収できたのか、すべて数字化されますし、その数字が成績となり、回収担当者の収入に直結します。
つまり、如何に効率よくこなすか、なのです。
任意売却はその意味で、お互いの経済的合理性が合致していること、そして、手間がかからないこと、そして何よりも債権者との交渉の機会を確保し、法律の専門家、不動産業者などを、自らイニシアチブをとり活用して、自分に有利な条件を引き出していくことも可能なのです。 |
競売件数
担保権(抵当権)の実行としての競売件数は、高等裁判所の資料によれば、平成20年62,470件、平成21年62,832件、平成22年46,308件と推移しています。モラトリアム法が平成21年12月施行されましたので、その影響あってか平成22年は競売件数が減少しました。参考に裁判所のURLを張り付けておきます。
http://www.courts.go.jp/sihotokei/nenpo/pdf/B22DMIN1-2.pdf
競売の地域格差
ある民間のシンクタンクのデータによれば、日本全国での競売取り下げ件数の割合は約10%、とされています。東京、横浜で約20%、埼玉で約12%、千葉で約10%とされています。この数字は物件の流通性に大きく関係しています。大都会で人口が密集している地域(人気のある地域)は、競売取り下げ割合が多いということは、任意売却による取り下げ又は何らかの事情で取り下げられたものとなります。地域によって大きな違いがあることが分かります。任意売却を成功させるためには早い段階から販売活動をするのが鉄則なのは言うまでもありません。
また、あるシンクタンクのデータによれば、落札価格倍率が、裁判所算出売却基準価格の2.0を超えて落札されているケースがあります。一般的には、債権者が任意売却に応ずる基準が、売却基準価格に対して1.5とすれば、逆転現象(競売価格が任意売却より手取り金額が高くなる可能性有)になるケースも出てくるのです。このことは債権者も当然把握していますので、地域、物件によっては簡単に任意売却に応じないケースも出てきます。
競売手続きの流れ
簡単に競売の流れを記しておきます。 ローン返済停止・債務不履行(民法第415条) ⇓ 銀行より支払催促の通知があります。 ⇓ 滞納3か月経過すると個人信用情報に事故として登録されます。 ⇓ 滞納3~6か月経過すると担保の不動産の売却するなど、一括返済を要請されます。 ⇓ 内容証明郵便にて、担保差し押さえ通知などがきます。 ⇓ 保証会社が銀行に代位弁済し、債権が保証会社にうつります。 ⇓ 裁判所より競売開始決定通知書が特別送達にて郵送されます。 ⇓ 競売開始決定に基づきマンション、不動産の差し押さえ登記(民事執行法第48条)がされます。 ⇓ 事件番号が付きます。今後は裁判所での手続きになります。 ⇓ 執行裁判所により売却基準価額決定(民事執行法第60条) ⇓ 裁判所書記官による物件明細書作成(民事執行法第62条) ⇓ 裁判所の執行官が現地調査して、物件明細書、物件評価書、現地調査報告書の3点セットが作成されます。 ⇓ 入札日時が決定します。 ⇓ 新聞に掲載されます。 ⇓ 3点セットが公開されます。 ⇓ 開札は裁判所で執行官により行われます。 ⇓ 最高価格入札者に対して、裁判所が売却許可を決定します。 ⇓ 執行抗告(民事執行法第74条)がなければ売却許可が確定します。 ⇓ 残金を納付します。 ⇓ 裁判所の職権で抵当権等は抹消されます。 ⇓ 落札者と入居者の話し合いが決裂した場合。 |
競売取下げ方法と費用
競売売取り下げは誰ができるのでしょうか?
競売取り下げを申請できるのは、競売申し立てた本人(債権者)になります。
競売取り下げ可能なのはいつまでか?
期間入札での開札期日前日までは・・・競売取り下げ可能です。
開札期日以降、買受人が決定し代金納付があるまでは・・・買受人の承諾が必要となります。
但し、買受 希望人がいない場合は競売取り下げ可能です。
買受人が代金納付した場合は・・・競売取り下げ不可能となります。
競売取り下げ費用
収入印紙が1000円X不動産競売物件筆数
差し押さえ抹消登記登録免許税 競売を申し立てた費用 |
競売取り下げ費用の負担は、最終的に任意売却代金の中から精算することになります。
競売取り下げ判断の分かれ目は、債権者(競売申し立て者)が競売を続行した場合と、取り下げて新たな買い手と任意売却に応じた場合とで、どちらが多く回収できるかにあります。
尚、債権者が複数ある場合は、その利害関係を調整する必要があります。
メールによる相談は有料です。
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