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訴訟費用の負担の原則 民事訴訟法第六十一条
訴訟の費用負担は、訴訟に負けた側が負担することになります。和解になることも、訴訟が取り下げられることもありますが、判決によらない場合には、別に定められます。弁護士に支払う報酬料は、第155条2項の場合を除き訴訟費用にはなりません。裁判に勝っても相手方に弁護士費用を負担させることはできません。
(訴訟費用の負担の原則)
第六十一条 訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする。
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和解の試み 民事訴訟法第八十九条
裁判所は原則上いつでも和解を勧めることが出来ます。①当事者の言い分が出そろった段階、②証人調べを終了し、心証が得られた段階、が良いとされています。実際、早い段階で和解を勧めてもお互いに言いたいことを言い合うことになるのが当事者の心理です。
(和解の試み)
第八十九条 裁判所は、訴訟がいかなる程度にあるかを問わず、和解を試み、又は受命裁判官若しくは受託裁判官に和解を試みさせることができる。
専門委員の関与 民事訴訟法第九十二条の二
この条文は平成15年の民事訴訟法一部改正において新たに加えられたものです。マンション・建築物等の専門的知識が必要とされるような裁判において、設置されます。
(専門委員の関与)
第九十二条の二 裁判所は、争点若しくは証拠の整理又は訴訟手続の進行に関し必要な事項の協議をするに当たり、訴訟関係を明瞭にし、又は訴訟手続の円滑な進行を図るため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、専門委員の説明は、裁判長が書面により又は口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日において口頭でさせなければならない。
2 裁判所は、証拠調べをするに当たり、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするため必要があると認めるときは、当事者の意見を聴いて、決定で、証拠調べの期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。この場合において、証人若しくは当事者本人の尋問又は鑑定人質問の期日において専門委員に説明をさせるときは、裁判長は、当事者の同意を得て、訴訟関係又は証拠調べの結果の趣旨を明瞭にするために必要な事項について専門委員が証人、当事者本人又は鑑定人に対し直接に問いを発することを許すことができる。
3 裁判所は、和解を試みるに当たり、必要があると認めるときは、当事者の同意を得て、決定で、当事者双方が立ち会うことができる和解を試みる期日において専門的な知見に基づく説明を聴くために専門委員を手続に関与させることができる。
職権送達の原則等 民事訴訟法第九十八条
一定の法的書類は相手方に送達(相手が受け取る)されることが必要です。相手方に書類の内容を知る機会を与えたことを公的に証明することになります。この裁判所が行う送達を「職権送達」といいます。
(職権送達の原則等)
第九十八条 送達は、特別の定めがある場合を除き、職権でする。
2 送達に関する事務は、裁判所書記官が取り扱う。
公示送達 民事訴訟法第百十条 第百十一条 第百十二条 第百十三条
裁判所は、以下の場合につき特別な送達方法「公示送達」によることが出来る。
①当事者の住所が不明であり、どこに送達するかわからない場合。
②書留郵便で発送することが出来ない場合
③外国においてすべき場合、その国の関係部署の協力が得られない場合
④108条の規定で、外国の管轄官庁に依頼して、6か月経過してもその送達が証明できない場合。
一般的な不動産・マンション等の競売等においては、送達場所が不明というケースは①が該当します。
(公示送達の要件)
第百十条 次に掲げる場合には、裁判所書記官は、申立てにより、公示送達をすることができる。
一 当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合
二 第百七条第一項の規定により送達をすることができない場合
三 外国においてすべき送達について、第百八条の規定によることができず、又はこれによっても送達をすることができないと認めるべき場合
四 第百八条の規定により外国の管轄官庁に嘱託を発した後六月を経過してもその送達を証する書面の送付がない場合
2 前項の場合において、裁判所は、訴訟の遅滞を避けるため必要があると認めるときは、申立てがないときであっても、裁判所書記官に公示送達をすべきことを命ずることができる。
3 同一の当事者に対する二回目以降の公示送達は、職権でする。ただし、第一項第四号に掲げる場合は、この限りでない。
(公示送達の方法)
第百十一条 公示送達は、裁判所書記官が送達すべき書類を保管し、いつでも送達を受けるべき者に交付すべき旨を裁判所の掲示場に掲示してする。
(公示送達の効力発生の時期)
第百十二条 公示送達は、前条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過することによって、その効力を生ずる。ただし、第百十条第三項の公示送達は、掲示を始めた日の翌日にその効力を生ずる。
2 外国においてすべき送達についてした公示送達にあっては、前項の期間は、六週間とする。
3 前二項の期間は、短縮することができない。(公示送達による意思表示の到達)第百十三条 訴訟の当事者が相手方の所在を知ることができない場合において、相手方に対する公示送達がされた書類に、その相手方に対しその訴訟の目的である請求又は防御の方法に関する意思表示をする旨の記載があるときは、その意思表示は、第百十一条の規定による掲示を始めた日から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。この場合においては、民法第九十八条第三項 ただし書の規定を準用する。
訴え提起の方式 民事訴訟法第百三十三条
「訴状」・・裁判所に訴えを起こす書類であり、「控訴状」「上告状」「抗告状」等と区別します。
訴状には、
①当事者(原告及び被告)の氏名、住所、代理人
②請求の趣旨・・原告が裁判所に要求する判決
③請求の原因・・②の根拠及び事実
を記載しなければなりません。
訴状見本
訴状住所 東京都大田区蒲田0-0-0大森マンション0号 原告 マンション 太郎 住所 東京都品川区品川0-0-0品川マンション0号 マンション問題解決法律事務所 (送達場所) 原告代理人 大田 一郎 電話 FAX住所 東京都港区港0-0-0港マンション0号 被告 港 二郎訴訟物の価額 金00円 手数料額 金00円請求の趣旨 一、被告は、原告に対して、金00円及びこれに対する平成〇年〇月〇日から支払い済みまで年〇分の割合による金員を支払え。 二、訴訟費用は、被告の負担とする。 との判決及び仮執行の宣言を求める。請求の原因 一、被告は、原告に対して、次のとおり金員を貸し付けた。 ・貸付年月日 ・貸付金額 ・弁済期日 ・利息 ・利息支払い期 二、平成〇年〇月〇の弁済期を経過した。 三、よって、原告は被告に対し、次の金員の支払いを求める。 ・元金〇〇円 ・元金に対する平成〇年〇月〇日から支払い済みまで、年〇分の利息及び遅延損害金。関連事実証拠方法 一、甲第一号証(借用証書) 原告被告間の本件金銭貸借の事実を立証する。 二、甲第二号証(受取書) 本件金銭授受の事実を立証する。添付書類 一、甲号証写し 1通 二、訴状委任状 1通平成〇年〇月〇日 原告代理人 弁護士 品川 三郎 東京地方裁判所 民事部 御中 |
(訴え提起の方式)
第百三十三条 訴えの提起は、訴状を裁判所に提出してしなければならない。
2 訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。一 当事者及び法定代理人二 請求の趣旨及び原因
口頭弁論期日の指定 民事訴訟法第百三十九条
裁判長は訴状が提出され、被告に送達されると、次に法廷を開く日時を指定して、原告被告に招集をかけます。
呼び出し状見本
原告 大田 マンション太郎 被告 品川 マンション二郎事件番号 平成0年(ワ)第0号平成〇年〇月〇日 原告 大田 マンション太郎殿東京地方裁判所民事第0部 裁判所書記官 00口頭弁論期日呼出状口頭弁論期日は平成〇年〇月〇日午後0時と定めれれました。 同期日に当裁判所民事第0号法廷に出頭してください(出頭の際は、戸の呼び出し状を法廷に示して下さい)。 |
(口頭弁論期日の指定)
第百三十九条 訴えの提起があったときは、裁判長は、口頭弁論の期日を指定し、当事者を呼び出さなければならない。
時効中断等の効力発生の時民事訴訟法第百四十七条
債権の消滅時効は、提訴をもって中断されますが、その具体的な「時」はいつなのでしょうか。
条文では、訴状、及び第百四十三条第二項(第百四十四条第三項及び第百四十五条第四項の書面が提出された時と定められています。
(時効中断等の効力発生の時期)
第百四十七条 時効の中断又は法律上の期間の遵守のために必要な裁判上の請求は、訴えを提起した時又は第百四十三条第二項(第百四十四条第三項及び第百四十五条第四項において準用する場合を含む。)の書面を裁判所に提出した時に、その効力を生ずる。
釈明権等 民事訴訟法第百四十九条
釈明権とは、法廷で裁判長が当事者(原告・被告)の主張に矛盾点、不備、証拠等に関しての質問が出来る権利をいいます。
(釈明権等)
第百四十九条 裁判長は、口頭弁論の期日又は期日外において、訴訟関係を明瞭にするため、事実上及び法律上の事項に関し、当事者に対して問いを発し、又は立証を促すことができる。
2 陪席裁判官は、裁判長に告げて、前項に規定する処置をすることができる。
3 当事者は、口頭弁論の期日又は期日外において、裁判長に対して必要な発問を求めることができる。
4 裁判長又は陪席裁判官が、口頭弁論の期日外において、攻撃又は防御の方法に重要な変更を生じ得る事項について第一項又は第二項の規定による処置をしたときは、その内容を相手方に通知しなければならない。
釈明処分 民事訴訟法第百五十一条
釈明処分とは、裁判所の職権で、当事者(原告・被告)の要請がなくても権限に基づき、下記の措置を講ずることが出来ます。
①原告・被告等に、出廷の命令
②裁判所が適当と認めるものに事情を説明させる
③訴訟関係書類、訴訟で当事者が引用した文書や写真等訴訟に関連する物を提出させる
④当事者、第3者が提出したものを裁判所が保管する
⑤裁判所が自ら目的物を検証、専門知識を必要とする時に鑑定を命令
⑥事実や参考となる情報をもつ官庁や会社その他団体に依頼
(釈明処分)
第百五十一条 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、次に掲げる処分をすることができる。
一 当事者本人又はその法定代理人に対し、口頭弁論の期日に出頭することを命ずること。
二 口頭弁論の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で裁判所が相当と認めるものに陳述をさせること。
三 訴訟書類又は訴訟において引用した文書その他の物件で当事者の所持するものを提出させること。
四 当事者又は第三者の提出した文書その他の物件を裁判所に留め置くこと。
五 検証をし、又は鑑定を命ずること。
六 調査を嘱託すること。
2 前項に規定する検証、鑑定及び調査の嘱託については、証拠調べに関する規定を準用する。
自白の擬制 民事訴訟法第百五十九条
民事訴訟法では、
①相手方の主張を認めると述べた時は「自白」とされます。
②相手の主張を知らない(不知)と述べれば、避認となり争うものと推定
③口頭弁論の時出廷しなければ一項と同様の扱いになり、相手方の主張を自白したことになり、敗訴。
(自白の擬制)
第百五十九条 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
準備書面 民事訴訟法第百六十一条
法廷では、予め自分の主張を準備書面で裁判所と相手方に渡さなければなりません。
準備書面の記載事項
①攻撃防御の方法(自分の主張する事実と裏付ける証拠)
②被告の答弁書(一回目の準備書面)には原告の訴えを退ける判決を求め、相手の主張する事実を認めるかどうかの陳述。
準備書面見本
平成25年(ワ)第00号原告 マンション店舗組合員 0名被告 SDマンション管理組合法人
第0準備書面 平成25年11月13日 東京地方裁判所 民事第00部00係 御中 原告ら訴訟代理人 弁護士
第1 被告準備書面記載の事実に対する認否 1 第1(認否)記載の事実について 本件マンションの規約(原始規約)が区分所有者全員の同意により有効に成立しているとの点(第1の4〔3頁〕)は否認する。 その理由は原告第1準備書面第1の4ないし(11ないし13頁)で述べたことに加え,後記第3の1ないしで述べるとおりである。 原始規約に「タイプ別管理費」を負担する旨規定されていることが,「別段の定め」(区分所有法19条)に該当するとの点(第1の5〔3頁〕)は否認ないし争う。 その理由は,原告第1準備書面第1の4(13頁)で述べたことに加え,後記第3の2で述べるとおりである。 価格表(乙4)及び管理委託契約書(乙5)に記載された具体的な金額及び内容が,区分所有者間の利害の衡平が図られるように決定されたものであり(区分所有法30条3項),その内容が合理的なものであるとの点(第1の5〔3頁〕)は否認する。 その理由は,後記第3の3で述べるとおりであり,被告は,格差の合理性を基礎づける事実について,何ら主張・立証責任を果たしていないことが明らかである。 ・・以下省略・・ |
(準備書面)
第百六十一条 口頭弁論は、書面で準備しなければならない。
2 準備書面には、次に掲げる事項を記載する。
一 攻撃又は防御の方法
二 相手方の請求及び攻撃又は防御の方法に対する陳述
3 相手方が在廷していない口頭弁論においては、準備書面(相手方に送達されたもの又は相手方からその準備書面を受領した旨を記載した書面が提出されたものに限る。)に記載した事実でなければ、主張することができない。
終局判決 民事訴訟法第二百四十三条
判決には終局判決と中間判決、一部判決と全部判決があります。
上訴(控訴、上告)を断念し判決が確定した場合には、その効力として、ア)既判力、イ)執行力、ウ)形成力が生じます。形成力とは、新しい権利関係をつくる効力です。
終局判決は
①裁判所は最終的な判断が示せる状態と認めるときは、その審級の判決をします。
②訴訟の1部についても判決することが出来ます。
③前項の規定は、②つ以上の事件が併合している場合で、そのうちの1つについて判決を下す状況になった時又は、反訴している状況でその訴えのいずれかについて判決できる状態になった時に適用されます。
(終局判決)
第二百四十三条 裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
2 裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる。
3 前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中その一が裁判をするのに熟した場合及び本訴又は反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
判決事項 民事訴訟法第二百四十六条
「訴えなければ裁判なし」のいわれのとおり、原告が訴えた以外のことについては、判決を致しません。(処分権主義)(不告不理の原則)
(判決事項)
第二百四十六条 裁判所は、当事者が申し立てていない事項について、判決をすることができない。
自由心証主義 民事訴訟法第二百四十七条
自由心証主義・・事実かどうかの判断を裁判官の自由な判断に任せる原則。裁判官は、裁判資料の評価、過去の経験則、自由裁量により判決ができます。
(自由心証主義)
第二百四十七条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。
直接主義 民事訴訟法第二百四十九条
直接審理に携わった裁判官でなければ、判決の内容をどうするかの判決を下すことは出来ません。
都合により裁判官が途中交代する際の規定が以下条文に定められています。
(直接主義)
第二百四十九条 判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。
2 裁判官が代わった場合には、当事者は、従前の口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
3 単独の裁判官が代わった場合又は合議体の裁判官の過半数が代わった場合において、その前に尋問をした証人について、当事者が更に尋問の申出をしたときは、裁判所は、その尋問をしなければならない。
言渡しの方式 民事訴訟第二百五十二条・判決書 民事訴訟法第二百五十三条
判決書には以下記載しなければなりません。
①「主文」・・判決の結論
②「事実」
③「理由」
④口頭弁論の終結の日
⑤当事者及び法定代理人
⑥裁判所
(言渡しの方式)
第二百五十二条 判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。
(判決書)
第二百五十三条 判決書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 主文
二 事実
三 理由
四 口頭弁論の終結の日
五 当事者及び法定代理人
六 裁判所
2 事実の記載においては、請求を明らかにし、かつ、主文が正当であることを示すのに必要な主張を摘示しなければならない。
仮執行の宣言 民事訴訟法第二百五十九条
判決が確定する前に強制執行を許可する裁判です。
裁判所が、財産権(物権、債権、社員権及び無体財産権(知的財産権))の請求にについて判決する場合で、必要と認められた場合には職権で又は、当事者の申し立てで、担保の立てる、又は立てないで仮執行の宣言ができます。
また、以下条文に定められています。
(仮執行の宣言)
第二百五十九条 財産権上の請求に関する判決については、裁判所は、必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言することができる。
2 手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求に関する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
3 裁判所は、申立てにより又は職権で、担保を立てて仮執行を免れることができることを宣言することができる。
4 仮執行の宣言は、判決の主文に掲げなければならない。前項の規定による宣言についても、同様とする。
5 仮執行の宣言の申立てについて裁判をしなかったとき、又は職権で仮執行の宣言をすべき場合においてこれをしなかったときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、補充の決定をする。第三項の申立てについて裁判をしなかったときも、同様とする。
6 第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、第一項から第三項までの担保について準用する。
少額訴訟に関する特則 少額訴訟の要件等 民事訴訟法第三百六十八条
少額訴訟に関する特則
簡易裁判所において、訴訟の目的物価額が60万円以下の金銭の支払いの請求を目的とする訴えは少額訴訟による裁判を求めることが出来ます。
要件
①訴額が60万円以下の金銭の支払い請求
②同一の裁判所で同一年に10回を超えて少額訴訟の審理を受けていない。
③訴え提起の際に、少額訴訟による審理及び裁判を求める申述しなければならない。
(少額訴訟の要件等)
第三百六十八条 簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
2 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
3 前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。
反訴の禁止 民事訴訟法第三百六十九条 一期日審理の原則 第三百七十条
少額訴訟では、反訴が出来ません。反訴とは、訴訟の手続き内で被告が原告を訴えることは出来ません。
また、特別の事情がない場合には、最初の口頭弁論で審理をその期日において審理を完了しなければなりません。そのため、全ての攻撃又は防御方法を提出しなければなりません。
(反訴の禁止)
第三百六十九条 少額訴訟においては、反訴を提起することができない。
(一期日審理の原則)
第三百七十条 少額訴訟においては、特別の事情がある場合を除き、最初にすべき口頭弁論の期日において、審理を完了しなければならない。
2 当事者は、前項の期日前又はその期日において、すべての攻撃又は防御の方法を提出しなければならない。ただし、口頭弁論が続行されたときは、この限りでない。
少額訴訟 通常の手続への移行 民事訴訟法第三百七十三条
被告は通常訴訟への移行を申述することが出来ます。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日に弁論をし、その期日が終了した場合はこの限りではありません。
(通常の手続への移行)
第三百七十三条 被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
2 訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
3 次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
一 第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
二 第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
三 公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
四 少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
4 前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
5 訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。
少額訴訟 判決の言渡し 第三百七十四条
判決は相当でないと認める場合を除いて、口頭弁論の終結後直ちに行われます。
(判決の言渡し)
第三百七十四条 判決の言渡しは、相当でないと認める場合を除き、口頭弁論の終結後直ちにする。
2 前項の場合には、判決の言渡しは、判決書の原本に基づかないですることができる。この場合においては、第二百五十四条第二項及び第二百五十五条の規定を準用する。
少額訴訟 判決による支払の猶予 第三百七十五条
裁判所は、被告の支払いの資力を考慮して、判決の言い渡しの日から3年を超えない範囲で分割での支払いを命ずることが出来ます。
(判決による支払の猶予)
第三百七十五条 裁判所は、請求を認容する判決をする場合において、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があると認めるときは、判決の言渡しの日から三年を超えない範囲内において、認容する請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし、又はこれと併せて、その時期の定めに従い支払をしたとき、若しくはその分割払の定めによる期限の利益を次項の規定による定めにより失うことなく支払をしたときは訴え提起後の遅延損害金の支払義務を免除する旨の定めをすることができる。
2 前項の分割払の定めをするときは、被告が支払を怠った場合における期限の利益の喪失についての定めをしなければならない。
3 前二項の規定による定めに関する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
少額訴訟 仮執行の宣言 第三百七十六条
請求を容認する判決では裁判所は職権で、担保をたて、又は立てないで仮執行をすることが出来ることを宣言しなければなりません。
(仮執行の宣言)
第三百七十六条 請求を認容する判決については、裁判所は、職権で、担保を立てて、又は立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。
2 第七十六条、第七十七条、第七十九条及び第八十条の規定は、前項の担保について準用する。
少額訴訟 控訴の禁止 第三百七十七条
少額訴訟の終結判決に対しては控訴することは出来ません。控訴を許すと、最終的な紛争の解決まで時間と費用がかかり、少額訴訟の意味をなさないからです。
(控訴の禁止)
第三百七十七条 少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。
督促手続 支払督促の要件 第三百八十二条 支払督促の申立て 第三百八十三条
支払督促は、金銭その他の代替物又は有価証券の一定数の給付について(貸金・家賃・売掛金等)があることが証拠上明確であるときに用いられます。簡易迅速に債務名義を付与する制度です。
簡易裁判所に、書記官名で督促してもらいます。相手が異議を申し出なければ、債権者は仮執行宣言を出してもらえます。
但し、相手方の住所が不明での「公示送達」は利用できません。
支払督促申立書 見本
支払督促申立書工事代金 請求事件 当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり 請求の趣旨及び原因 別紙請求の趣旨及び原因記載のとおり債務者らは、連帯して債権者に対し、請求の趣旨記載の金額を支払え、との督促を求める。 申立手続費用 金00円 内訳 申立手数料 00円 督促正本送達費用 00円 申立書書記料 00円 申立書提出費用 00円 資格証明手数料 00円申立年月日 平成 年 月 日 申立人(債権者) 株式会社 マンション 代表取締役 マンション 太郎 東京地方裁判所書記官 殿価額 00円 印紙 00円 郵券 00円添付書類 資格証明 1通 |
(支払督促の要件)
第三百八十二条 金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求については、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促を発することができる。ただし、日本において公示送達によらないでこれを送達することができる場合に限る。
(支払督促の申立て)
第三百八十三条 支払督促の申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してする。
2 次の各号に掲げる請求についての支払督促の申立ては、それぞれ当該各号に定める地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に対してもすることができる。
一 事務所又は営業所を有する者に対する請求でその事務所又は営業所における業務に関するもの当該事務所又は営業所の所在地
二 手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する請求手形又は小切手の支払地
支払督促の発付等 民事訴訟法第三百八十六条
支払督促は債務者の言い分を聞かず(審尋しない)で行います。一方債務者は、これを発した簡易裁判所の書記官に「督促異議の申立」をすることが出来ます。
督促異議申して見本
督促異議の申立て債権者 マンション 太郎 債務者 大田 一郎右当事者間の平成0年(ロ)第00号貸金請求支払督促申立事件につき、御庁所属書記官 品川 二郎により平成 年 月 日付けでなされた支払督促は、債務者に同月 日に送達されましたが、不服なので、異議を申し立てます。平成 年 月 日 右債務者 大田 一郎 東京簡易裁判所 御中 |
(支払督促の発付等)
第三百八十六条 支払督促は、債務者を審尋しないで発する。
2 債務者は、支払督促に対し、これを発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所に督促異議の申立てをすることができる。
支払督促の記載事項 民事訴訟法第三百八十七条
支払い督促には、債務者がこの支払い督促を受け取った日から2週間以内に「督促異議」の申し立てをしないと債権者の申し立ての基づいて「仮執行の宣言」の警告趣旨が示され、また以下の項目が記載されます。
①給付の命令
②施給の趣旨及び原因
③当事者及び法定代理人(親権者、後見人、会社の代表者)
(支払督促の記載事項)
第三百八十七条 支払督促には、次に掲げる事項を記載し、かつ、債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは債権者の申立てにより仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。
一 第三百八十二条の給付を命ずる旨
二 請求の趣旨及び原因
三 当事者及び法定代理人
支払督促の送達 民事訴訟法第三百八十八条
支払い督促は
①債務者に送達されなければ効力がありません。
②支払い督促の効力は債務者の送達された時に生じます。
③債務者が申し出た住所に間違いがあった等で、その住所に送達できない場合の定めが定められています。
(支払督促の送達)
第三百八十八条 支払督促は、債務者に送達しなければならない。
2 支払督促の効力は、債務者に送達された時に生ずる。
3 債権者が申し出た場所に債務者の住所、居所、営業所若しくは事務所又は就業場所がないため、支払督促を送達することができないときは、裁判所書記官は、その旨を債権者に通知しなければならない。この場合において、債権者が通知を受けた日から二月の不変期間内にその申出に係る場所以外の送達をすべき場所の申出をしないときは、支払督促の申立てを取り下げたものとみなす。
支払督促 仮執行の宣言 民事訴訟法第三百九十一条
債務者が支払い督促の送達を受けて、2週間以内に「督促異議」の申し立てをしない時は、簡易裁判所書記官は、債権者の申し立てに基づき「仮執行の宣言」をしなければなりません。
仮執行宣言の申立 見本
仮執行宣言の申立債権者 マンション 太郎 債務者 大田 一郎上記当事者間の平成 年(ロ)第0号貸金請求支払督促申立事件につき、債務者は平成 年 月 日送達された支払い督促に対し法定期間内に異議の申し立てをなさず、また支払いもしないので下記費用とともに仮執行の宣言を願いたく申請いたします。平成 年 月 日債権者 マンション 太郎東京簡易裁判所 御中仮執行宣言手続費用 1、送達料 金00円 2、申し立て書記料 金00円 計 金00円 |
(仮執行の宣言)
第三百九十一条 債務者が支払督促の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは、裁判所書記官は、債権者の申立てにより、支払督促に手続の費用額を付記して仮執行の宣言をしなければならない。ただし、その宣言前に督促異議の申立てがあったときは、この限りでない。
2 仮執行の宣言は、支払督促に記載し、これを当事者に送達しなければならない。ただし、債権者の同意があるときは、当該債権者に対しては、当該記載をした支払督促を送付することをもって、送達に代えることができる。
3 第三百八十五条第二項及び第三項の規定は、第一項の申立てを却下する処分及びこれに対する異議の申立てについて準用する。
4 前項の異議の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。
5 第二百六十条及び第三百八十八条第二項の規定は、第一項の仮執行の宣言について準用する。
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