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民法3
契約の解除(第540条)
契約の解除は、有効に成立した契約を、一方的に破棄することをいいます。当事者の合意で解除(約定解除)、法律の定めによる解除(法定解除)があります。
また、契約解除の意思表示を一旦行えば、その撤回は出来ません。
第540条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2、前項の意思表示は、撤回することができない。
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履行遅滞による解除(第541条・第542条)
契約当事者の一方が、履行期限を過ぎても債務を履行しない場合には、相当な期間を定めて催告し、それでも相手が履行しない時に、はじめて、契約を解除することが出来ます。
なお、特定の日時に履行されないとその目的が達成されないような契約の場合には、催告なしでも契約解除が出来ます。(第542条)
第541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。
第542条 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、前条の催告をすることなく、直ちにその契約の解除をすることができる。
履行不能による解除(第543条)
債務の履行が不能・一部不能となった場合には、相手方は直ちに契約解除が出来ます。催告は不要となります。履行不能ですから、催告する意味がありません。
自己破産申請や履行不能となる法的手続きが申請された時点で、債権者は催告なしで、その金銭消費貸借契約を解除することが出来ます。
第543条 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
解除権の不可分性(第544条)
マンション、土地建物、不動産の契約当事者が複数人いる場合には、契約解除はその全員に対して行わなければなりません。各人ばらばらに通知したもの、しなかった者とがいたりする場合には、契約が解除されて者とそうでないものが出てしまうことになるので全員に対して行わなければなりません。
第544条 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
2、前項の場合において、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
解除の効果(第545条)
契約が解除された場合は契約をしなかった場合の状態に戻すことになります。現状回復義務です。マンションなどの売買で契約解除した場合などは、売主が受け取った代金を買主へ返還し、買主は目的物を売主に返還することになりますが、実際の取引においては(手付金に関する特約を付けて)売主・買主は履行が着手されるまでの期間内は契約解除できる期限と定め、その期限以降は違約扱いとして処理されます。そして、その違約金は手付金相当額、又は売買代金の20%以内に収め、解約の手続きがスムーズに行えるよう契約条項に加えています。
契約解除においては、代金とその利息を付して返さなければなりませんが、実際の取引では、特約に利息を付さずに買主に返還する旨の取り決めがなされます。
なお、解除前に第3者に転売されていた場合には、第3者の善意・悪意問わず、登記を備えることが必須条件となります。
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2、前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3、解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
売買契約(第555条)手付金(第556条)
マンション、土地建物、不動産売買契約とは、双務、有償、諾成の契約になります。
手付金は、マンション、土地建物、不動産売買契約締結時に、買主から相手方に交付される金銭、その他の有価物です。手付金は売買代金の一部支払いと解釈されがちですが、一般的には手付金は売買代金に充当されます。
手付金の種類
①証約手付・・マンション、土地建物、不動産契約成立の証拠としての手付。
②解約手付・・一方の当事者が履行に着手するまでは、買主は手付放棄、売主は手付倍返しすることでマンション、土地建物、不動産の契約解除できる「解約権を留保」する手付。
③違約手付・・ア、損害賠償額の予定としての手付。イ、違約罰としての手付
第555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
第556条 売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる。
2、前項の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う。
売主の担保責任(第560条、第561条)瑕疵担保責任(第570条)
売主の担保責任(無過失責任)とは、マンション、土地建物、不動産の売買物件が他人の物であったり、隠れた欠陥があったり、面積等が不足している等の場合は、売主がその責任を負うことをいいます。
担保責任は、特約を設けてその責任を免責したり、軽くすることもできますが、次の場合には責任を負います。
①マンション、土地建物、不動産の物件の数量不足等・瑕疵を売主が知りながら買主に告げない場合
②マンション、土地建物、不動産の売主自ら第3者のために権利を設定したり、譲渡した場合
担保責任でも「隠れた瑕疵」があった場合の責任を瑕疵担保施責任といいます。
マンション等の任意売却においては、担保責任、瑕疵担保責任、そのいづれも売主は責任を負わない契約を取り交わします。担保責任を負えない状況にありますので免責されます。但し、上記にもあるように、瑕疵を知っていて告知しないのは許されないことですから、免責にはならず、買主が売買契約の目的を達成できないような瑕疵であった場合は、契約解除の対象となります。
いくら免責といえども、買主を欺くようなことは許されません。
第560条 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
第561条 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
担保責任を負わない旨の特約 民法第五百七十二条
売主は、マンション、不動産の売買契約において、その瑕疵担保責任を負わない旨の契約を締結することもできます。
但し、契約時点において、そのマンション、不動産についての瑕疵について売主が知っていて買主に告知しなかった場合はその特約は無効となります。
(担保責任を負わない旨の特約)
第五百七十二条 売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
(請負人の担保責任)第634条
(請負人の担保責任)
第634条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。
第638条
第638条 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。2 工作物が前項の瑕疵によって滅失し、又は損傷したときは、注文者は、その滅失又は損傷の時から1年以内に、第634条の規定による権利を行使しなければならない。
委任 (第643条、第644条、第645条)
不動産・マンションの売却又は購入に手続きにおいて、法律行為の契約を依頼する「委任者」が、依頼を受ける「受任者」との委任契約を締結し成立します。
この委任契約の根底にあるのは委任者・受任者の信頼関係に基づくものとされております。
原則は報酬なしですが、特約により報酬額を取り決めることもできます。弁護士、司法書士、行政書士、そして宅建業者との媒介契約も委任契約の一種です。
また、受任者は、委任の本旨に従い「善管注意義務」の義務が生じます。これに違反しますと債務不履行となり、委任者に損害が生じた場合には、損害賠償の責任が生じます。
また、受任者はいつでも委任者の求めに応じて報告の義務があります。これに反せば、善管注意義務違反となります。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
(受任者の注意義務)
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
(受任者による報告)
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
不法行為(第709条)
不法行為とは、何の関係も無い(契約関係)他人から損害を加えられて、その加害者に対して損害賠償を請求する権利が生じますが、その法的制度を意味します。
他人から損害を受けたらすべてが不法行為となるわけではありません。一般の不法行為が成立するには以下の要件を満たす必要があります。
①加害者に故意・過失がある
②加害者に*責任能力がある
③権利の侵害がある
④損害が発生している
⑤因果関係がある
*・・責任能力とは自己の行為がどのような結果になるのか予測が出来こと、そしてそれを回避する能力(知能)が備わっている必要があります。
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
第710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
第711条 他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。
第712条 未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
使用者責任(民法第715条)
使用者責任とは、従業員が事故を起こした場合には、その監督責任者である雇用主(会社)にもその不法行為責任を負わせるものです。例えば、マンション、土地建物、不動産の仲介業務において、社員の不法行為により生じた損害については、雇用している不動産会社も責任が問われます。
使用者責任成立要件
①雇用関係(使用関係)がある
②事業の執行中に行われた不法行為
③被用者が一般の不法行為の要件を備えている
④使用者が被用者の監督を相当の注意で行い、損害が発生したことを証明できない
使用者責任が成立した場合は、使用者も、被用者も不法行為責任を負うことになります。
第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2、使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3、前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
土地工作物責任(民法第717号)
土地工作物責任とは、マンション、建物等の保存に瑕疵があり他人に損失を与えた場合、そのマンション、建物の占有者、所有者が被害者に対して賠償責任を負います。
一次的には、マンション、建物の工作物の占有者
二次的には、マンション、建物の工作物の所有者(占有者がいない場合又は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていた)
マンション、建物所有者は、無過失責任となります。そのマンション、建物の施行者に原因があったとしても、所有者が責任を取らなければなりません。
民法第717条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2、前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3、前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
共同不法行為(民法第719条)
複数人が共同で不法行為(マンションの売買において、設計者、建築業者、そして販売会社そのいずれもが、過失又は不正行為による損害が生じた場合)を行った場合、その損害については各自が連帯して責任を負います。共同不法行為のうちそのいずれが損害を加えたのか知ることが出来ない場合でも同様とされます。また、教唆、ほう助した者も共同不法行為の責任を負うことになります。
民法第719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2、行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
過失相殺(第722条)
・損益相殺とは、不法行為で損害を受けたとしても、一方でその原因でかかるべき費用を免れたり、利益を得ていたりした場合にはその分を相殺することを意味します。(ex交通死亡事故で、被害者遺族への支払いは、被害者が生きていたらかかった費用を相殺)
・過失相殺とは、不法行為で、被害者にも過失責任がある場合に、その度合いに応じて賠償額を算定します。(マンション工事現場内の人身事故において、工事区内の規制線に無断で立ち入ることにより事故が発生した場合には、その無断で立ち入った被害者の過失を考慮に入れて相殺することが出来ます。)
第722条 第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2、被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
(第417条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。)
名誉棄損(第723条)
名誉棄損も不法行為に該当し、社会的評価が低下することが、利益の侵害とされます。また、名誉棄損の場合は、謝罪広告の掲載を求めることも可能です。
名誉棄損が成立しないためには
①公共の利益
②公益
③事実が真実
の要件が必要です。
例えばマンション内の区分所有者がマンションの役員の誹謗中傷するチラシを投函した場合に、その誹謗中傷が、マンション全体の共同の利益の有無、そして、事実であるのかそうでないのかがポイントになります。
第723条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。
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