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マンション管理費等の滞納と管理組合による競売請求

マンション管理組合が、管理費を延滞している区分所有者に対して、区分所有法59条に基づいて行った競売の請求が棄却された。

概要

マンションの区分所有者が、平成12年11月から平成18年1月まで169万円滞納した。マンション管理組合は、マンションの区分所有者に支払い督促を行い、銀行預金を差し押さえたが、預金残高がなく回収できなかった。そこでマンションの強制競売を検討した。しかし、多くの担保権が設定されており、無剰余とされることが予想され断念した。そこでマンション管理組合は、区分所有法第59条1項に基づく競売を請求した。

判決

マンション管理費の延滞が約170万円と多額であり、5年半にも及ぶ長期にわたる延滞は、区分所有法(マンション法)6条1項の”共同の利益”に反する行為であり、同法59条1項にさだめる、共同生活に著しい障害が生じているといえる。

区分所有法(マンション法)59条は、区分所有権をはく奪し、区分所有関係から排除するものであることから厳格に行うべきであり、先取り特権の実行、他の財産の強制執行などで回収できず、競売による以外にないことが明らかな場合に限るのが相当である。

マンション管理費延滞者は、長期滞納を謝罪し、マンション管理費を分割弁済の和解を希望しており、マンション管理組合は、延滞者の和解の希望を拒否して競売の途を選んだ。

マンション管理組合は、区分所有法(マンション法)59条1項の競売申し立て以外に管理費を回収の途がないとはいえず、同条の要件を満たすと認められない。よってマンション管理組合の請求は棄却する。

(東京地裁判決 平成18年6月27日)

まとめ

共同の利益に反し、「他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」でも、「もはや同条の競売による以外に回収の途がないことが明らかな場合に限る」とされ、和解の中で債権の回収の可能性があるとして競売の請求を認めなかった。

 

マンション競売後の延滞管理費はだれが負担する?

競売後、管理費延滞分については注意が必要です。以下に判例を記しますのでご覧ください。

 

競売によるマンションの買受人から、元の所有者に対して、延滞管理費の請求が認められました。

概要 Aは平成16年1月、B所有のマンションを競売により買い受け、その所有権を取得したところ、Bはマンション管理組合に対し、管理費、修繕積立金及び組合費を滞納していた。Aは、滞納分219万円を平成16年5月、マンション管理組合からの請求により代位弁済したと主張して、Bに求償金の支払を求めて提訴した。
本件競売手続では、現況調査報告書及び評価書には、平成15年6月現在の、Bの管理費等の滞納207万円がある旨記載され、物件明細書には管理費等の滞納分がある旨記載されていた。評価書は、上記時点の滞納分に見合う21%の減額(211万円)をし、これに基づき最低売却価格は795万円とされた。Aは競売に参加し、1,054万円で落札し、本件マンションの所有権を取得した。
Bは、本件競売物件の物件明細書等に明示されており、競売の最低売却価格からも既に滞納額が控除されているから、滞納分はXが負担すべきであるなどと主張し争った。一審地方裁判所はXの請求を全部認容したので、Bが控訴した。

判決 ①Bは、本件マンションの所有権がAに移転するまでの間の本件管理費について支払義務を負っている。
②建物の区分所有等に関する法律(マンション法)8条によれば、Aは、滞納部分について、Bの特定承継人として支払義務を負っていることは明らかである。
これは、集合建物を円滑に維持管理するため、特定承継人に対して重畳的な債務引受人としての義務を法定したものであり、債務者たる当該区分所有者の債務とその承継人の債務とは不真正連帯債務の関係にあるものと解されるから、民法442条(連帯債務者間の求償権)は適用されないが、区分所有法(マンション法)8条の趣旨に照らせば、当該区分所有者と競売による特定承継人相互間の負担関係については、特定承継人の責任は当該区分所有者に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、当該区分所有者がこれを全部負担すべきものであり、特定承継人には負担部分はないものと解するのが相当である。自民党司法制度調査会(保岡興治会長)は16日、借金の担保となっている不動産を、裁判所による競売にかけずに所有者の意思で売却額などを決める「任意売却」を進めやすくする法案をまとめた。買い手が見つかった場合に抵当権1位の者が同意すれば、ほかの担保権者が1カ月以内に競売の実施を求めたり、5%以上高い価格での買い取り先を見つけたりしない限りすべての抵当権を外せる仕組みに改める。
したがって、Aは、滞納分につき、弁済に係る全額をBに対して求償できることとなる。

(東京高裁判決 平成17年3月30日)

 

競売後、延滞していたマンション管理費について、競落人が元の所有者に請求できることになります。

尚、任意売却の場合は、債権者側に精算項目として了解をいただき、決済時、又は決済時までににマンション管理組合に精算いたしますので、延滞分が残り、後から請求されることはありません。