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占有移転禁止の仮処分命令の効力 民事保全法第六十二条

占有移転禁止の仮処分をしておけば途中に第3者が目的物(マンション・不動産)を占有された場合でもこれを排除できます。しかし、この第3者は、債務者から占有を承継したもであり、勝手に占有した者は対象にはなっていませんでした。この勝手に占有する者に対して、別に新たに提訴する必要がありました。そこで、不法に占有する「占有屋」が横行し債権者の権利に実現の妨げになっていました。

そこで、民事保全法は大幅に改善され、このような「占有の継承によらない占有者(占有屋)」にも占有移転禁止の仮処分の効力が及ぶよう新たな規定が設けられました。それは、執行官の仮処分を執行するにあたり、執行官に、①債務者が占有移転の禁止されている旨、②執行官がその保管をしている旨を公示させます。

この公示がされた場合、債務者の承継された第3者はもちろん、他の「占有屋」に対しても、仮処分がなされたこととして、その効力が及ぶとされました。

また、上記仮処分の執行後に占有した者に対しても、「その執行がされたことを知って占有すた者」と推定され、ほとんどすべての占有者にたいして「悪意の占有者」とされ、仮処分の効力は確実なものとなりました。

参考公示書

                               平成 年(執ハ)第   号
                   公示書事件番号
債権者  大田 マンション太郎
債務者  品川 マンション二郎標記事件について、00裁判所がした仮処分決定に基づき、次のとおり公示する。
1 債務者は、下記不動産の占有を他人に移転し、又は占有者名義を変更することを禁止されている。
2 当職は、平成 年 月 日下記の不動産の債務者の占有を解いて、これを保管中である。
ただし、債務者に限り、使用を許した。(注意)下記の不動産の処分、公示書の損壊等をした者は、刑罰に処せられる。平成  年  月  日
東京地方裁判所執行官記
(不動産の表示)
所在地  東京都大田区蒲田0-0-0号
家屋番号 00
マンション名  マンション蒲田 0号

 

条文

(占有移転禁止の仮処分命令の効力)
第六十二条  占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。

一  当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者

二  当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者

2  占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。