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いわゆる、耐震偽装事件による建築行政、建築関係各法律の不備により安全確保の全面的な法改正がなされました。その概略を纏めました。

一、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律

平成18年6月21日公布

1、建築基準法の一部改正(平成19年6月20日施行)

①確認検査の厳格化

(A)建築主事又は指定確認検査機関は、マンション等建築物の計画が一定の構造計算に係る基準に  適合するかどうかを審査する場合においては、都道府県知事の構造計算適合性判定を求めなければならないものとする。(建築基準法第6条第5項)

(B)階数が三以上である共同住宅(マンション)の一定の工程について中間検査を義務付けるものとする。(建築基準法第条の3第1項)

(C)都道府県知事は、その指定する者(指定構造計算適合性判定機関)に構造計算適合性判定の全部又は一部を行わせることができることとする。(建築基準法第18条第2項)

②指定確認検査機関に対する監督の強化等

(A)指定確認検査機関の指定に当たっては、関係特定行政庁の意見を聴かなければならないものとするとともに、欠格事由の拡充等を行う。(建築基準法第77条の18~建築基準法第77条の20)

(B)その他特定行政庁に対する関係書類の保存の義務付け、建築基準適合判定資格者の登録の欠格事由の拡充等所要の改正を行う。(建築基準法第77条の29の2)

③罰則の強化

建築物の構造耐力に関する規定等に違反したマンション等建築物の設計者等は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する等罰則の強化を行う。(建築基準法第98条)

 

2、建築士法の一部改正(平成19年6月20日施行)

①建築士免許の欠格事由及び建築士事務所の登録拒否事由の拡充を行う。(建築士法第7条、建築士法第23条の4)

 

②建築士に対する構造計算によってマンション等建築物の安全性を確かめた場合におけるその旨の証明書の交付の義務付け、建築基準法に違反する行為の指示の禁止等を行う。(建築士法第20条第2項)

 

③建築士事務所の開設者の名義貸しの禁止等を行う。(建築士法第21条の2、建築士法第24条の2)

 

④その他建築士の不正行為に対する罰則の強化等所要の改正を行う。(建築士法第35条以下)

 

3、建設業法の一部改正(平成18年12月20日施行)

①建設工事の請負契約に対して、工事の瑕疵を担保すべき責任又はその履行に関して講ずべき補償保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容を書面(請負契約書)に記載しなければならない。(建設業法第19条第1項)

 

②建設業者の不正行為に対しては、罰則強化を行う。(建設業法第48条~建設業法第53条)

4、宅地建物取引業法の一部改正(平成18年12月20日施行)

改正は以下の4つに大別される。

①説明すべき重要事項の追加(宅地建物取引業法第35条1項13号)

業法第35条第1項の重要事項説明の規定に「当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し補償保険契約の締結その他の措置で国土交通省令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」(13号)が追加されました。

マンション戸建て等物件の瑕疵に関する履行保証保険自体が義務付けられているわけではありませんが、保険に加入しいるか否か、加入の場合はその契約の内容について、買主等にその情報を提供することが適切との趣旨に基づいています。

 

措置の概要

措置した契約の形式 記載・説明すべき事項
(A)保証保険契約又は責任保険契約の場合 当該保険を行う機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
(B)保証保険又は責任保険の付保を委託する契約の場合 当該保険の付保を受託する機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
(C)保証委託契約の場合 保証を行う機関の種類又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲

*当該措置の概要として、当該措置に係る契約の締結等に関する書類を別添することとして差し支えありません。また、当該宅地建物(マンション)が未完成物件の事情により、重要事項の説明の時点で当該措置に係る契約が完了していない場合には、当該措置に係る契約を締結する予定であること及びその見込みの内容の概要について説明するものとします。

②37条書面の記載事項の追加(宅地建物取引業法第35条1項11号)

宅建業者は、自ら契約を締結したときはその相手方に、当事者を代理して契約を締結したときはその相手方と代理の依頼者に、媒介により契約を締結した時は双方の当事者に遅滞なく、法定事項を記載した書面を交付しなければなりません。この書面が、いわゆる「37条書面」であり、実務では「契約書」をもって、この書面に代えています。その記載事項に「当該宅地又は建物(マンション)の瑕疵を担保すべき責任についての定めがあるときは、その内容」(第11号)が規定されていましたが、上記①の重要事項の改正に合わせて「補償保険契約等の措置」に関することが追加されました。

同号は、「当該宅地又は建物(マンション)の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置についての定めがあるときは、その内容」と改正されました。

なお、記載すべき内容は、「瑕疵担保責任の内容について定めがあるときは、宅地建物(マンション)の構造部分、設備、仕上げ、等についてその範囲、期間等の具体的内容」に加え、上記「措置の概要」表の形式に対応する記載事項とされています。

③重要事項の告知義務の改正(宅地建物取引業法第47条1号)

業法第47条は、業務に関する事項として、重要事項の告知義務(第1号)、不当に高額な報酬要求の禁止(第2号)、手付貸与の禁止(第3号)を定めています。

④罰則規定の強化(宅地建物取引業法第79条以下)

上記の改正に合わせて、業法8章の「罰則」規程の改正が行われ、違反行為に対する各条の罰則が大幅に強化されました。

さらに、違反行為者を罰する他その者が属する法人等も罰するという、いわゆる「両罰規定」について、法人等に対して最高1億円の罰金を科すことができるという強化もされました(宅地建物取引業法第84条)

 

 

 

二、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律

平成19年5月30日公布(法律第66号)、平成20年4月1日施行

1、目的

本法は、その目的として、住宅(マンション)の瑕疵の発生の予防と瑕疵があった場合の担保責任の履行の確保が重要であるとして、建設業者及び宅地建物取引業者よる瑕疵担保保証金の供託、瑕疵担保責任保険法人の指定、保険契約に係る紛争の処理体制を定めることにより、品格法と相まって、発注者及び買主の利益の確保と円滑な住宅の供給を図ることを謳っています。(特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律第1条)

この法が定めるのは大別して以下の4つになります。

①建設業者による住宅建設瑕疵担保保証金の供託

②宅地建物業者による住宅販売瑕疵担保保証金の供託

③住宅瑕疵担保責任保険法人の指定

④住宅瑕疵担保責任保険契約に係る新築住宅(マンション)に関する紛争の処理体制

裁判外の紛争解決

斡旋、調停、仲裁の比較

斡旋 裁判所の民事調停 裁判所の民事調停を除く調停 仲裁
解決方法 話し合いにより合意 同左 同左 仲裁判断による解決
確定判決の効力
時効の中断 中断しない 中断する 中断しない 中断する